神樹のアンバーニオン
芋多可 石行
降臨!琥珀の巨神!
第1話 神椚の仔
…イヨウタ
…ヘメネュウ
…ガネイ シドツイ
…ジュシン ガッタ
…ルシタタ クノコハ
…ルミノガ ウヲ
…ルミツメハ ホシ
…アノ オモイノ チ……
……太陽の表面
凄まじいエネルギーが唸りを上げる環境のとある一画に、僅かな波も立たない広大な輝く平原があった。
光凪ぐ遥か地平線の向こうには常に形を変え、逆巻く火炎の山脈が連なり、二度と同じ
そんな輝く平原の中心に、幹、枝、葉に至るまで、全て漆黒の色を纏った 木 のような物体が、何故か燃えもせずに
その太陽の木の樹高は軽く一万メートルを超え、地球のクヌギによく似たそれは一切の揺らぎも見せず、暗い天に向かって豊かに伸び、その幹からは何故か乾きもせずに滴る樹液の雫が、大いに周囲の光を照り返していた。
そんな大小様々な雫の中の一つに漂う、巨大な青い人影。
胎児のように身を
硬質化し質感が違って見える樹液、もとい、琥珀の
神樹のアンバーニオン
東北地方
市街中心部行きのローカル線の車窓には、青空と海がセットで登場した。
周辺の二月の山々は、針葉樹の緑と残雪の斑模様以外、特に微妙な薄茶色で占められ、少々寂しい光景だった。
「う~ん、やっぱりこの時期はこの辺お昼過ぎるともう夕方っぽいね?」
海が視界に入った時から雑談を止めて、物思いに耽っていた少年、須舞 宇留(すまい うる)は、ボックス席の正面に座る姉、柚雲(ゆくも)に尋ねられた。
「ウルはいつも、この辺りの印象はどーでスか?」
宇留は水平線に小さく浮かぶ大型船を見つめながら、今時煙突からあんなに煙を出す船も有るのだろうかと考えながら答える。
「う~ん、この切ない感じの空と海のブルー······悪くないっスよ?」
そう言いながら宇留は、スマホで車窓の写真を撮った。
一瞬、学校をサボっているという後ろめたさが頭を過ったが、今は考えない事にして二枚目のシャッターを切る。
柚雲はまだ十代前半のそんな弟の枯れ様を少し心配しつつ、自分もスマホを構えて風景を撮影した。
終点の軸泉で下車した須舞姉弟は、飲み物と人気のご当地萌えマスコットグッズを売店でキープし、祖父母が昼食用にと前日から予約注文してくれていた地元丼弁当を駅中の店で名字を名乗って受け取ると、タクシーで十分程のコンビニで降り、そこから増えたお土産の紙袋をガサガサ揺らしながら少し歩き、ようやく祖父母宅に到着した。
姉弟の生家がある首都圏、
「あらユックちゃーんウルくーん!」
玄関を開けっ放しにして、玄関の小上がりに腰掛けて待っていた祖母が立ち上がり、門の前に来た二人を歓迎する。続けて祖父の頼一郎(らいいちろう)が奥から顔を出した。
「おーう!よく来たねぇ、休んでー」
挨拶もそこそこに通された居間には付け合わせの小料理が数品並び、祖父母は孫姉弟との昼食を今まで待ってくれていたようだ。
宇留が手を洗い居間に戻ろうとすると、既に柚雲と祖母の女子トークが矢継ぎ早に聞こえてくる。
すぐさま口パクでドシェー!と言いながら微笑みつつ廊下に退散して来た頼一郎と出くわし、その光景に宇留も笑みがこぼれた。
宇留の笑顔を見て頼一郎は安堵したようだ。
頼一郎は宇留に、現状を追及するつもり毛頭無かったようだが、息子から多少孫の悩みは知らせてもらっていた。
そこで気分でも変わればと明日の【イベント】を口実に孫達の旅行を提案したのだった。
頼一郎はそのまま宇留に指先で手招きする。
「?」
招かれた先には、かつて電話台だった小棚と廊下の壁に掛けられたカレンダー、その脇には布製のレターラックがあり、頼一郎はその二段目からパンフレットを取り出して宇留に見せる。
「これ、明日行く洞窟のヤツね?前も言ったけど今年は当たり年だってさ!」
明日のイベントとは洞窟内で見れる大氷柱の見学会の事だった。
普段は一般未公開の洞窟だが、年に数回、人数制限を設けて予約抽選で公開しているらしかった。
当たり年というのは、氷柱がここ最近でも珍しい程の太さに成長したという事で、予約は滑り込みセーフだったという事を頼一郎は教えてくれた。
宇留は頼一郎に渡された発行部数が少なく、ちょっとしたレアモノだというくすんだ色のパンフレットを持って、姉の居る居間に同じ説明をすべく向かった。
…キミムネル チハ
…キトオラソ…
…ココロ ノ ソラ
…テラス タビ……。
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