第31話 霊への制裁

 じいさんの家に来てからというも普段と変わりなく過ごしている。

 朝起きて朝食食べて少し冬休みの宿題をして、昼食を食べて少し休憩して遊ぶ。

 龍牙とけいが喧嘩して怒られ、兄さんはいつも寝ている。

 うん、普段と変わらない。


 龍牙が異様に外に出たがろうとしている以外は。


 霊を食べるのは禁止だと言っているのに出たがろうとしている。

 何がそこまで魅力的に映るのだろうか。

 普通は霊を食べるなんてことはしないから、その感覚は俺たちにはわからないが、龍牙にとっては魅力的なんだろう。

 毎日使者の声が屋敷に響き渡っている。


「龍よ」

「じいさん」

 

 厚着をして雪が降っている外を廊下に座りながら見ていたら、冬用の羽織を着たじいさんが近づいてくる。

 そして廊下に座布団を引くとそこに座った。直に座ると冷たいからな。


「龍牙はなぜあんなにも外に出たがっておるのだ?」

「なんでだろうね。俺でもわからないんだ」


 じいさんの質問に嘘で答えた。本当は分かっている。霊やあやかしを食べたいという欲で出たがっているということ。

 けど、なぜそこまでしてこだわるのかがわからない。どんな魅力があるのかとか。

 ただ、下手に言えばじいさんはそのことを叶えようとするだろう。孫が大好きだから。


「それほど出たいのであれば明日出ようかの」

「観光とか?」

「新しく出来た店があっての。そこのがとても美味でな。龍たちも食べに行かんか?」

「いいね。行こうよ」


 いつからいたのか、龍牙がいつのまにかじいさんの後ろにいた。俺はまだいいけど、じいさんが驚いて胸を押さえている。これでじいさんが倒れたら怒るよ俺。


「りゅ、りゅうき……いつのまに来たのじゃ」

「さっきだよ。それよりも明日出かけるの?」

「そうじゃ。楽しみかの?」

「うん。次龍兄さんも楽しみにするかもね」

 

 そういって、どこかへ向かっていった。方向的には掘りごたつがあるところだ。


「龍よ。龍牙はいつのまにあんなことができるようになったのじゃ?」

「最近だね。俺もたまにびっくりすることがある」

「足音もなくか。まるで忍みたいじゃの」


 じいさんになっても男の子なんだなって見て思う。わくわくして目を輝かせているのだから。

 

「おぬしたちは小さいころから特殊な存在かと思っておったが、ここまでとは」

「怖い?」

「怖いわけなかろうて。特殊なところ以外は、普通の孫たちじゃ」


 そういって俺の頭をなでてきたじいさん。

 同い年の平均身長よりも大きくなってから頭をなでられることが少なくなってきたから、こうやって撫でてくれると嬉しくなってしまう。

 

「おーい」

 

 甘んじて受け入れていると、どこから声が聞こえてくる。けど、それはじいさんには聞こえていない声。

 つまり、霊が俺のことを呼んでいる。けど、無視をする。


「おーい」

 

 あと1回俺のことを呼んだら潰してやる。


「おー……ぎゃ!」


 塀の外にいる霊を睨み、氷塊を落とした。ぐちゃりとつぶれた音が聞こえたが、無視だ。

 今この幸せな空間を邪魔するな。

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