第27話 高級品
まだまだじいさんの家に着くには時間がかかる。
そして、もう少しでお昼も近いんか、兄さんのお腹が鳴った。寝ていても食事している夢を見ているのだろうか。よだれも出始めている。
「相棒、助けてくれ」
「はいはい」
慶と向い合せになって寝ている兄さん。よだれが慶の肩を濡らしている。
兄さんのあごと慶の肩の間にハンドタオルを置いたが、ハンドタオルだけで足りるだろうか。
「腹が減ったのかの? ほれ、着くまでこれを食べておくといい」
座席の横に置いてあった紙袋を渡してきたが、その紙袋が誰でも知っていて、そして高級店のものだった。俺らじゃ買えないくらい高い値段がするお店のお煎餅。
それが座席横に置いてあった。サプライズするためだったのだろう。当然嬉しいが、値段を知ってから少しだけ食べようか躊躇している。
知る前まではとんでもなくこだわって作られた美味しいお煎餅という認識だったが、値段を知って、一つ一つ手作りで材料にもこだわっていると知ってからは安易に手が出せない。
こんな高級なの食べられないよなんて今更言えなくて、受け取った。
「いただきます。……うおっ!」
慶もお腹が空いていたのか、個包装された1つを取って開けると、こだわって作られたものはとてもつもなくいい匂いがして、その匂いにつられて起きた兄さん。
慶が食べようとしたお煎餅を奪って食べている。
「ちょ! 兄貴!」
なんとも幸せそうな顔をして食べているが、横から奪われた慶が不満そうに兄さんを見つめている。
「4人はいらんのか?」
「僕は平気」
「俺も今お腹空いてないから大丈夫」
母親と父親もお腹が空いてないと言っている。
今はたべないけど、個包装されているし、長持ちするだろうから3時の時のおやつにでもしようかな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます