第14話 あの何かは

 朝礼が終わり、午前中の授業を受けて、昼になってもあの何かが気になって仕方なかった。


「相棒どうした? ずっと上の空じゃねぇか」


 授業中は勉強に集中しなきゃいけないからあまり考えてなかったけど、昼食の時間になって考えていたらいつの間にか慶が正面にいた。肩をゆすられて初めて気付いたほどに。

 

「ああ、ごめん。朝礼が始まる前、ちょっと気になることがあってさ」

「なんだよ」

 

 正面の椅子を引き、対面で座る慶。

 

「俺の見間違いかもしれないけど、黒い服を着た何かがいて、まばたきした瞬間にいなくなったんだよ」

「今朝見た不審者か?」

「いや、わからない。ただ、帽子は被っていなかった」


 今まで不審者が出たことなんてないに等しいほど平和な町だったのに、何故か急に出るようになった。


「そいつどこにいたんだ」

「校門入口の壁の奥側」

「学校の外か。見たのは相棒だけか?」

「たぶん」


 俺の他に誰か見たのかもしれないが、誰にも確認してないんだよな。

 だが、誰か見てたら騒ぎ出しそうな感じだが、今のところ誰も騒いでいない。隣のクラスはどうなんだろうか。


「なぁ、慶。そっちのクラスで見たってやついたか?」

「いや、何も聞いてねぇ」

「じゃあ俺だけ?」

「相棒、今日は先に帰るなよ。それまでに何かあったら知らせろ」

「わかった」


 狙われたか。家まで無事帰れたらいいんだけどな。今のうちに対策する術を練習しておかないと。冬場だから誤魔化しやすい。

 凍らすのは効くだろうか。明らかに人の姿してたから足はあるよな。だったら足元を凍らして滑らせるのはどうだろうか。

 いや、そもそも本当に人だったのか? はっきりしすぎている霊は生きている人と見間違えてしまうほどっていうくらいだ。完璧に擬態している可能性もある。

 となると、凍らすのは無理だな……。


「迫田、どうした? 考え事か?」

「あ、すみません。ちょっと考え事してました」


 いつのまにか来ていた先生に注意された。今はとにかく午後の授業に集中しよう。

 

 放課後になり、警戒しながらげた箱に向かう。今のところ校門の外には帰っていく生徒しかいない。


「相棒、帰るぞ」

「ああ」

「あれからなんもねぇか?」

「一応大丈夫みたい」


 入口から校門に向かうまで見ているが変なのはいないみたいだ。ただ、家に帰るまでは安心はできない。


「人なら殴る。霊でも殴る」

「どっちも殴るんだ」


 慶が指をゴキゴキ鳴らしている。人だった場合傷害罪になるからそうなる前に止めないといけないが。


「人だったら警察沙汰になっちゃうからやめな?」

「人じゃなければいいんだな?」

「悪霊とかだったらいいよ」

「いいのかよ」

「悪霊はこっちが被害に遭うから」


 悪霊といえど、元は人だしこっちが被害遭わなければ何もする気はない。が、対策は打たないといけないから、それだけは注意しておく。

 どんなことをしてくるかわからないから早めに家に帰りつきたい。

 家が一番安心する。


「慶、家まで競争しよう」

「お! いいぞ! あ、おい! ずりぃぞ!」


 よーい、どん。なんて言わない。先ほどから何者かの視線を感じて一刻でも早く家に帰りたいから。

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