第10話 呼ぶ声は
あの話をしてから3日ほど経ったが、龍牙の中でルールはまだ決まっていないみたいだ。今まで無差別に食べていたみたいだし、線引きが難しいのだろうなとは予想できる。
ただ、あまり長く待つ気はない。
「……兄さん」
「どうした?」
そっとドアを開けてきたのは末っ子の龍牙。
「このまえ言ってたこと決めてきた」
「早かったな。じゃあ聞かせてくれるか?」
自室に誘導し、ベッドに座るよう促した。素直に入ってくるとベッドに座る末っ子。俺を見ながら話しだそうと、口を開いては閉じてを繰り返している。
ゆっくりでいいんだぞ。今日は特に予定ないしな。
「……浮遊霊と地縛霊は食べない」
「それ以外は食べる、と?」
「悪いやつはいない方がいい」
ずいぶんと過激ではあるが、地縛霊でも悪いモノもいたり良いモノする。
それはどう判断するんだと問いかければ、悩みだした。
しばらく俯きながら考え、自分の中で納得いった考えが
「自分と家族に害を
「そ、そっか……」
何としてでも食べるという末っ子の強い意志に少しだけ圧倒されてしまった。
龍牙にとって霊を食べるということが、俺たちが食事をすることと変わりないから余計止めることができない。
いったいどうしたらいい。
制御するため用のクッキーを作ってみたが、まだ食べてくれていないしな。
「じゃ」
そう言って自室に戻っていく末っ子。
しばらく俺が悩む時期になりそうだな。と考えながら明日の学校の準備をする。
「夜ご飯だよー」
と、1階から俺たちを呼ぶ声が聞こえてくる。とりあえず今は考えるのをやめて母親の手伝いをしに、1階へ。
今日の夜ご飯はなんだろうか? カレーとかだったら2階まで匂いが来るが今日はない。肉じゃが? それとも野菜炒め? まぁとにかく楽しみだ。
そう思いながら部屋のドアを開けて下に向かおうとすると、兄がものすごい勢いで降りて行った。
ご飯となったらいつもなんだよな。
「夜ご飯だよー」
また同じ言葉を言ってる。
そんなすぐ言わなくても聞こえてるよと言おうとした瞬間、ふと違和感を覚えた。
同じ母親の声ではあるんだが、聞こえた方向が俺の後ろからなんだ。
「夜ご飯だよー」
また聞こえてきたが、無視に限る。
ここ2階だし、母親は俺たちの耳がいいのを知ってるから1回言えば来ることは知ってる。だから無視して1階へ。
「今日は肉じゃが? 美味しそう」
すでに机の上に家族分の置かれている。あとは人数分の箸とコップを出すのみ。
早く食べたくて次男が暴走しかけているのを慶が抑えている。普段は慶が抑えられる立場なのにな。
「……あとで処理しておくよ」
「やっぱりあれ悪いやつ?」
「うん」
箸を取りだそうと、台所に行くと末っ子が近づいてきて、小声で先ほどのことを言ってくる。
あれ振り返っていたらどうなっていたのかわからないが、絶対にろくなことにならない。
「相棒、早く飯食べようぜ。そろそろ兄貴抑えんの疲れてきた」
「あ、うん」
箸を人数分取ってそれぞれのランチマットの上にのせていく。
さて、ご飯を食べようか。
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