俺の弟は死を食べる

やさか

第1話 

 俺は5人兄弟の中で3番目の子だ。男兄弟が多いってところ以外はごく普通の兄弟。

 いや、訂正しよう。全然普通の兄弟ではない。


 兄弟全員幽霊が見えているし、はらえるわけではないが、霊に襲われたときの対処法を知っている。

 もちろん俺も対処するすべは知っている。

 それがどういうものかは教えられないけど。


 なぜこんな話をしたかというと、俺たちの末っ子についてなんだ。

 末っ子の名前は龍の牙と書いて龍牙りゅうきという。

 末っ子の霊に対する対処法がこと。俺たちが肉や野菜を使った料理を食べるのと同じように末っ子も霊を食べている。


 調理はせずそのままガブリと。


 そんな末っ子と共に過ごしていく中で、ある日の委員会での帰りでずいぶん時間がかかった時があった。


 あれは夜7時くらいだったかな。

 その時は冬間近だったからまわりはとんでもなく暗くて、街灯の灯りだけが頼りだったんだが、末っ子が一度だけ霊を食べているところを見たことがあった。

 食べ終わった後、頬に傷らしきものもついて、すぐに消えていたけど。


 あれはなんだったのかいまだにわからない。

 その時、驚いて聞いてみたら前からだと言っていた。

 しかもお腹が空いたから適当にその辺を漂っていた霊を食べたと。


 そう言われた時、漂っている霊でももしかしたら帰る場所があるだろうと叱った。少し眉間に皺を寄せて時間をおいてから頷いたけど、またしていると思う。


 何故なら、家を抜け出してきた末っ子が今、戻ってきた音がしたからだ。


 𠮟ったあの日から、末っ子の様子を見ていたが、いまだに夜出かけている。

 それに、様子を見ていたからって食べたかどうかの判断は俺には出来ない。


 だから一度相談したことがあった。

 見てみなければわからないといったその御方おかたは、ひそかに使者を送り、末っ子を見たという。


 そして、その結果が今でも食べていると。

 ただ、それをとめれば餓死すると言われて、俺にはどうすることもできなかった。末っ子がいなくなってしまうのは悲しいし、親も悲しむ。


 対策はないのかとその御方おかたに聞けば、『なんぢらの近くなり』と答えが返ってきた。俺たちの近くに誰かいたかなと考えを巡らせていたら、確かに近くにいたのを思い出したんだ。


 最初、俺が『俺たち兄弟は霊が見えるし、はらえるわけではないが対処法を知っている』と言ったのを覚えているか? その祓い方を知っている知り合いがいるんだ。


 俺たちは一般家庭生まれではあるんだが、450年以上続く血筋でもあるんだ。

 そして俺たちの祖父の家に、俺たち迫田家と陰陽師の家系について書かれている文献もある。


 内容は、先祖で俺たちみたいに霊が見えて、力を持っている者が生まれたことがある、と。それを制御する力はあれど、祓うためのものではない。だからお抱えの者をあてがった、と。


 今からでも知り合いの陰陽師に会って末っ子の状態を見せたかったが、テスト期間ということもあって会うことは出来ないが、電話で軽く説明するだけになった。


 テスト期間が終わり、祖父の家に用があったから休日家族で行くことになった。

 その時に陰陽師であるかなぐりに事細やかに説明すると、時間はかかるが必ず対策法を考えてみますと言った。


 とりあえずは安心していいと言われ、俺は通常の学生生活に戻れるようになった。

 なったのだが、また新たに問題が増えてしまったのだ。

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