カイジュウと「海」

@Smile-2525

第1話 小さな怪獣

これは、あなたが向き合うべき「罪」の物語

これは、あなたが拭えない「傷」の物語



あなたが知ってる海を、どれだけどれだけ泳いでも、きっと辿り着けないような場所に、小さな島がありました。

そこの島でも、あなたと同じような人間が、集落や畑を作って、平和に暮らしていました。


ある夜

島の海辺で、誰が落としたのかも分からない大きな卵から、小さな生命が生まれました。

殻を突き破る音はとっても弱くて小さくて、誰にも気付かれないように、そっと生まれました。


生まれた子は、真昼の海みたいな水色の身体で、トカゲにも似たような怪獣でした。

きっとあなたがこの子を見たら、醜いと思うでしょう。


怪獣が生まれて最初に見たのは、大きくて暗い「海」でした。怪獣にはその「海」が何か分からず、生まれたばかりで身体が小さいから、とてもとても遠くにあるように思えました。


でも、怖かった。


怪獣は本能で、「海」を怖いと感じていました。

それなのに何故だか不思議と、生まれた瞬間からその「海」は現れたように思えたのです。


それから怪獣は、数年間気ままに生きていました。起きたら顔を洗ってお散歩をして、お腹が空いたらお魚を食べていました。


ある日、遠くまでお散歩した時の事です。

その日は、ジャングルのように木々が茂る森の中を歩いていました。


しばらく歩いていると遠くから、賑やかな動物の鳴き声が聞こえてきました。気になって鳴き声のする方に向かってみると、誰かが意図的に木を切り倒して、広場にしたような場所が見えてきたのです。


そこでは、自分と同じくらいの背の高さの動物達が、鳴き声をあげながら、追いかけ合ったり、地面を引っ掻いて模様を作ったり、赤い木の実を食べたりして、楽しそうに遊んでいました。

そうです、人間の子供達です。

怪獣は、この不思議な生き物達が気になって、しばらく見てみる事にしました。


しばらく見ていると、怪獣の心から、たった今出てきたばかりの湧水のように、少しずつ暖かい何かが溢れてきました。

自分も一緒に遊びたい、そんな気持ちがどんどん高まっていき、気付けば人間の子供たちの方に歩き出して居ました。


子供たちは、木陰から出てきた、青くて醜い生き物の姿を見て、目をまん丸と見開き、動かなくなってしまいました。


怪獣は、さっきまで楽しそうに遊んでいた子供たちが急に静かになった事を不思議に思いました。


そう思ったのも束の間、子供たちは我に返ったかのように叫び、一斉に逃げ出してしまいました。


怪獣は何が起こったのかも分からず、うつむきながらとぼとぼと歩いて、いつもの海辺に戻りました。


そしていつも通り、「海」が膝の高さまで浸かる位の場所まで行き、晩御飯のお魚をつかまえに行きました。怪獣の姿を見て、逃げ出そうとするお魚を、ダーツのように素早く爪で刺して、戦利品であるご馳走を一口で平らげました。


それを見た他のお魚は、怪獣とその足元に広がる「海」から逃げるように、遠くまで一目散に泳いで行きました。怪獣はその姿が、どこか昼間の動物達が逃げ出した様子に似ていると思いました。


そこで怪獣は気付きました。あの子達はきっと自分に食べられてしまうと思ったのだと。

怪獣は急いで暗い「海」から浜辺に出て、倒木に腰掛けながら考えました。

どうすれば、子供たちを食べない事を伝えられるだろうか。


しばらく考えた後、子供たちが食べていた赤い木の実や、地面を引っ掻いて作っていた模様について思い出し、怪獣は子供たちと仲良くなる為の方法を思いつきました。


早速怪獣は、必要な物を集める為に暗い夜の森へと消えて行きました。


その様子を、「海」はただ黙って、遠くから見つめていたのでした。

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