第11話 デーモン族の男「ドライブ」

「ドライブ。状況の報告だ」

インプ族。共に西国に乗り込んだザップが現れたのは夜の時分になってからであった。

西国ウェスタ。国内の他街と交易するための主要な港都市ポルト・アリア。


西国の者たちには悟られぬよう、密かに暮らしつつ、来るポルト・アリア侵攻のための準備を続けていた。が、ちょうど昨年。とうとう俺たちの画策、住処かが露呈し始めてしまった。


結果、広がりつつあったアジトは放棄。とうとう岸壁に近くまでの撤退をせざるを得ない状況になった。


「状況か。頼むからいいニュースを教えてくれよ」

「そうしたいのはやまやまだが、残念なニュースだ」

ザップは泥に塗まみれた顔を一つ拭う。


「エコーの森まで哨戒しょうかいに出てた、グリムとディーンの消息が絶えた。半日毎の定時連絡が無い状況だ」

エコーの森はポルト・アリアから10キロほど離れた深い場所であった。ここからは約5キロ。戦線に当たる場所であった。つまり懐まで迫っているということだ。


「わかった。ドゥイの部隊をここまで撤退させろ。今晩のうちにだ。連中がどこまで迫ってるか分からない。それにこれ以上、同胞が死んだら打つ手なしだ」

「わかった」


移住もとい、密かな侵攻として魔界から渡ったインプ族、オーク族の数は200人。

今やその数は3分の1になっている。


自身も何度か戦闘を行った。その時には西国の兵士の数に驚いた。構えた陣の数を見た時ざっと自分達の10倍はいただろう。

それに、演奏者ミュージシャンもそれなりの数がいた。戦況は悪い。理解しているつもりだが、納得はしたくなかった。


海を眺める。

俺の選択。そのせいで沢山の死者が出た。だが今もなお、こんな俺を支持し、付いてきてくれる仲間はいる。


「やるしかねぇ」

暗闇の海に向かい一人呟いた。

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