赤ちゃん
さくらの体をそっと床に寝かせて泣き声の方へと近づいて行った。
磨りガラスの引戸を開けて居間を確認すると、部屋の片隅にベビーベッドがあった。泣き声はそこからだ。
恐る恐るとベッドの中を見てみると、そこには小さな小さな赤ちゃんが仰向けになって大きな声で泣いていた。
この赤ちゃんがさくらの子どもであることは直ぐに分かった。だって目元や口元が彼女にそっくりなのだから。
「かわ、いい……」
思わずそう呟いたが、臭い。とても臭い。赤ちゃんの服は尿や便でぐちゃぐちゃになっていて、一体いつからおむつを替えてもらえていないのだろうか? 一体いつからさくらはあそこで──。
考えることを一旦止めて、大急ぎで家捜しを始めた。おむつに着替え、もしかしてお腹がすいているかもしれないのでミルクもいる。戸棚や引き出し、押入れの中、ありとあらゆる所をひっくり返した。まるで泥棒の様だが、部屋は私が荒らす前から散々荒れていた。
タンスから赤ちゃんの服を発見して慌てて全部引っ張り出した。すると服の下から数冊のノートが出てきた。もしかしたら赤ちゃんの取り扱い関する何かが書き留めてあるかもしれないとすがる思いで表紙を捲り目を通して──絶句した。
ノートはさくらの日記だった。そこに書かれていたことに血の気がゾッと引いた。……そして内容を読み進めていくうちに、私の中で何かがパンッと弾けたのだった。
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