第14話決戦の幕開け
夜空を切り裂く角笛の音が、再び村に鳴り響いた。
松明の列が森の奥から現れ、まるで炎の川のように揺れ動く。
「……百や二百じゃない……もっといる」
狼は毛を逆立て、牙をむき出しにした。
村人も盗賊も、皆が整然と並んでいる。
誰一人声を発さない。
ただ俺の命令を待つ従属者の群れ。
(……これだけの数相手に、本当に……)
胸の奥がざわめく。
だが逃げ場はない。
◇
「そこにいる者たちよ、抵抗は無駄だ!」
騎乗の男が前列に出て、剣を掲げる。
月光を浴びるその鎧は豪奢で、ただの兵ではないことを示していた。
「辺境の村を勝手に掌握し、我らの兵を襲った罪――王国の名のもとに裁きを受けよ!」
兵たちが一斉に鬨の声をあげ、地面が揺れるほどの足音で迫ってくる。
◇
「……悠斗」
隣で
その手は震えている。
けれど瞳はまっすぐに俺を見つめていた。
「私は、あなたの決断に従います」
小さな声。
だが、その言葉は胸に深く突き刺さる。
(……そうだ、俺が決めなきゃいけない)
◇
「全員――構えろ!」
俺の声に呼応し、村人たちが農具や石を構え、盗賊たちは剣を抜く。
整然と動き出すその姿は、もはや村人でも盗賊でもない。
一糸乱れぬ兵士の軍勢だった。
「な、なんだあいつらは……!」
敵兵の列に動揺が走る。
その刹那――。
『命令を確認――
頭の奥に、再びあの声が響く。
前列にいた敵兵の数人が、突然動きを止め、虚ろな瞳で膝をついた。
「……っ!」
俺は思わず拳を握りしめる。
◇
「……まさか、味方を……!」
敵の指揮官が目を剥き、叫んだ。
だが、すでに遅い。
膝をついた兵たちは俺に頭を垂れ、次の瞬間、剣を振り上げて仲間に斬りかかっていた。
「やめろ! 裏切り者か!?」
「ぎゃあっ!」
混乱の声が戦場に響き渡る。
その混沌の中心にいるのは――俺。
◇
「今だ! 一斉にかかれ!」
命令に従い、村人も盗賊も、そして従属した兵士までもが一斉に突撃した。
松明の炎が揺れ、剣戟と怒号が夜を震わせる。
「押し返せ! 相手はただの村人だ!」
「いや……動きが整いすぎてる……!」
敵兵の叫びが恐怖に変わっていく。
農具を振るう農夫、石を投げる子供でさえ、訓練された兵士のように正確に動き、敵の隊列を崩していった。
◇
「……これが、俺の力……」
声にならない呟きが喉の奥で漏れる。
望んだわけじゃない。
けれど、今はこの力しか村を守る術がない。
隣でリーネが炎を放ち、敵兵を押し返す。
狼が唸り声を上げ、血に染まった草原を駆け抜ける。
俺はただ、声を張り上げ続けた。
「倒せ――一人残らず!」
◇
戦場は炎と血に包まれていく。
従属した者たちは一切迷いなく、ただ俺の命令を実行する。
その光景は――守るための戦いであるはずなのに、どこか悪夢のようにすら見えた。
(……俺は、どこまでこの力を使うんだ……?)
胸に重い問いを抱えながら、俺はさらに声を張り上げた。
◇
遠くで、再び角笛が鳴り響いた。
その音は、まだ終わりではないことを告げていた。
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後書き
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
第14話では、ついに王国の本隊と悠斗たちが激突しました。
人間相手にまで従属が発動し、混乱する敵軍を前に、悠斗は己の力の異常さを突きつけられます。
次回は、戦いの中で浮かび上がる「敵軍の真の狙い」と「リーネの秘密」に迫ります。
悠斗がこの戦場でどう決断するのか――ぜひお楽しみに!
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