クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました

髙橋ルイ

第1話召喚と絶望

教室きょうしつしろ閃光せんこうつつまれた瞬間しゅんかんおれ思考しこうを止めた。

黒板こくばんつくえも、まどから見える景色けしきさえも、まばゆい光にかきされ――つぎ視界しかいが戻ったとき、おれたちはらない場所ばしょに立っていた。


男子A「な、なんだここは……」

女子A「え、宮殿きゅうでん? っていうか……王様っぽいひとが座ってる……」


周囲を見渡せば、おれのクラス全員が揃っていた。

そしてその隅には、担任の桜井 進一さくらい しんいち先生までもが巻き込まれており、顔を真っ青にして震えていた。

目の前には巨大な玉座ぎょくざがそびえ、その上に腰かけるのは豪奢ごうしゃ衣装いしょうをまとった国王こくおう

左右には鎧姿よろいすがた騎士きしたちがずらりと並び、空気くうきは張りつめていた。


国王こくおう「――歓迎する。我が国に召喚された勇者候補たちよ」


低く重い声に、生徒せいとたちは一斉にざわめく。


男子B「……まじ? これって」

男子C「異世界転移……ってやつじゃね?」

男子D「うおお、ついに来た! おれ、チートスキル手に入れちゃうんだろ!」


恐怖と興奮が入り混じった声が飛び交う。

おれ――高宮 悠斗たかみや ゆうともまた、心臓の鼓動が早まるのを抑えられなかった。


国王こくおう「これより、一人ずつ鑑定かんていを行う。女神の祝福しゅくふくを受けし力を示し、この世界を救う勇者となるがよい」



最初に前へ出たのは、クラスの中心人物――佐伯 蓮司さえき れんじ

運動神経が抜群で、教師からも信頼される存在だ。


騎士きし「では、水晶すいしょうに手を置きなさい」


佐伯 蓮司さえき れんじが手をかざすと、水晶すいしょうがまばゆく輝いた。


騎士きし「攻撃力:高。スキル:剣聖けんせい


男子E「おおっ! すげぇ!」

女子B「やっぱり蓮司れんじくんだよね!」


拍手と歓声。国王こくおうもうなずいていた。


次に呼ばれたのは――姫野 美咲ひめの みさき

大人しいけれど優しい心を持ち、いつも周囲を気づかっていた。おれにとっても、ただ一人まぶしい存在だ。


水晶すいしょうが炎のように赤く輝き、場を圧倒する。


騎士きし「魔力:極めて高い。スキル:火焔魔導士かえんまどうし


女子C「すご……!」

男子F「美咲みさきちゃん、最強じゃん!」


姫野 美咲ひめの みさきは少し頬を赤らめながらも、周囲に笑顔を返した。



それから次々とクラスメイトたちが前に出ては、強力なスキルを披露していった。

治癒士、聖騎士、神官……。

誰もが頼もしい力を手にしていく中、ついにおれの番が来る。


騎士きし「次、高宮 悠斗たかみや ゆうと


名前を呼ばれ、足がすくむ。背中にクラスメイトたちの視線を感じながら、震える手を水晶すいしょうへと伸ばした。


……しかし。


騎士きし「……? スキルが表示されません」


何度やり直しても、水晶すいしょうは鈍い光を放つだけ。


騎士きし「……ステータスは最低値。スキルは“不明”」


場の空気が一変した。


男子G「はぁ? なんだよそれ」

男子H「完全に外れ枠じゃん」

女子D「足手まといになる前に追い出せばいいのに」


嘲笑ちょうしょうと失望の声が、矢のように突き刺さる。

国王こくおうも冷たい目でおれを見下ろした。


国王こくおう「……役立たずを召喚してしまうとは。女神も気まぐれなものだな」



姫野 美咲ひめの みさき「……悠斗ゆうとくんは、きっと……」


小さくもらした言葉は、周囲の喧騒にかき消された。

誰の耳にも届かず、当の高宮 悠斗たかみや ゆうとも気づかない。



国王こくおう「――無能は不要。ここから去れ」


冷酷な言葉とともに、おれは玉座の間を突き飛ばされるように追い出された。


桜井 進一さくらい しんいち「ま、待ってください! 彼はまだ子供で――」


必死に声をあげる桜井さくらい先生だったが、国王こくおう一瞥いちべつで言葉を詰まらせた。

結局、誰も助けてはくれない。


扉が閉まる音が、胸に重く響く。


外に放り出され、ただ一人。

夕暮れの空は赤く染まり、冷たい風が吹き抜けていく。

おれはその場に膝をつき、唇を噛みしめた。


おれだけ……本当に何もないのか?)



だが、森の茂みから低いうなり声が聞こえてきた。


「グルルル……」


赤い目を光らせたおおかみの魔物が姿を現す。鋭い牙が、夕闇の中で光った。


高宮 悠斗たかみや ゆうと「っ……来るな!」


恐怖に震え、思わず叫んだ瞬間――頭の奥で声が響いた。


『命令を確認――従属じゅうぞく開始』


「……え?」


次の瞬間、狼は牙をむき出しのまま動きを止め、やがて頭を垂れてひざまずいた。


高宮 悠斗たかみや ゆうと「な、なんだよこれ……」


信じられない光景。さっきまで襲いかかってきた魔物が、今は忠実に従っている。


(これが……おれのスキル……?)


出会った相手を強制的に従わせる。

そんな異常な力が――俺に。


焚火たきびを囲み、狼が横に寄り添う夜。

おれはまだ絶望の只中にあった。だが、確かに心の奥に小さな希望が灯っていた。


(無能なんかじゃない……そうだろ?)


_______________________________


後書き


ここまで読んでいただき、ありがとうございます!

第1話では「召喚」「鑑定」「迫害」「追放」に加え、主人公が初めてスキルを発動させる場面までを描きました。


次回は、従属させた魔物との旅立ち、そして新たな出会いが物語を動かしていきます。

ぜひ引き続きお楽しみください!

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