僕を打つもの

@watanabetanabe

第一章 「異常の始まり」

タイトル「僕を打つもの」

一章「異常の始まり」


僕の名前は宮田澄央。澄んだ山々の様に清らかに育ってほしいと

いう意味で、澄央と名づけられた。

そんな僕は清らかでは無くなってしまいました。


夜、布団の中で僕は欲望に耐えながらモジモジと体を擦り合わせる。

暗い部屋の中、傍らのスマホにはASMRの映像だけが光を放っている。

ボダボダボダボダ。

頭の中を見知らぬ誰かに虐められている。おおきな指の腹で脳を叩かれている。


もっと叩いて。頭ん中だけじゃない。全身をもっと強く!

僕の身体の筋肉神経の髄まで届くように叩いて。

僕が怪我しても良いから叩き続けて。

そしたらどんなに気持ち良いだろう。

こんな事を思うようになってからこの欲は止まらなくなって来た。

ASMRの雑なタッピングを爆音にして聞いても物足りなくなって来た。


いつからか僕は急に「変態」に成り下がった。

ある時から下半身がむずむずと虫が這うような感覚に襲われて、

次第に全身へと広がった。

そんな時手のひらの固いところで筋肉を押すように叩くと、

今まで味わったことの無い快楽に襲われた。


こんな夜がいつまで続くかわからない。

でも周りの人間に知られるわけにはいかないんだ。

特に、僕を未だに清らかなままだと信じて疑わない母には。

知られたら僕はきっと飛び降りるしかない。


ASMRはいつのまにか終わり、動画より爆音のコマーシャルが

耳をつんざく。次は何の動画にしよう。


飛び降りる時も全身が叩きつけられて、気持ち良いなんて思うのかな。

笑えない冗談を思いついて、「ハッ」と無理やり息を吐いてみる。

口角は一ミリも上がらなかった。


死にたい。

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