第10話 虚無タイム
「ま、まだ広くするんですか!?」
「こんなもんでいいかなあ。足りなきゃ後から広げればいい」
「そ、そうなんですね」
「ここは倉庫にも使うことができると思ってさ。地中だと温度も安定しているし、食料の保管にもいいだろうと思ってね」
向こうが見えないほどの広い空間にアリサがほええと口が開きっぱなしになっている。腐りやすい食材はもう少し深いところに倉庫を作るようにしようか。
崖の入口は駅にしようと思っているから、将来的に別路線と繋がることも想定して、結構だだっ広い空間にしたんだ。
駅と表現しているが、電車のように誰でも動かせるというわけでもないし、ダイアグラムがあって〇番線に電車が入りまーすというものもない。
ブロックの箱……ブロック貨車を動かす、もとい走らせるにはマーモがいなきゃはじまらないし、マーモを出すには俺とエルナンがいないといけないだろ。
開拓民が増えた時に俺たち以外でブロック貨車を動かすことができるようになっていないと、ブロック貨車による貨物輸送の威力を十全に発揮することはできない。それでも、遠い場所から一直線にモノを運ぶことができるってのは画期的なんだよな。
一日一回往復するだけでも、貨車の大きさ次第で相当な積み荷を運ぶことができるからね。これから作るブロックレールの曲がり具合、高低差によって状況が変わってくるけど、ブロック貨車を数台繋げて運ぶことだってできると思うから。問題は毎日、俺とエルナンが運搬作業に時間を使うことなんだよな。
荷物を運ぶ以外にもやることがたんまりあるからさ……。
とまあ、捕らぬ狸の皮算用はこれくらいにして、作業を進めようじゃないか。
「運搬用に外までブロックレールを敷設しようか、ブロック貨車の高さ分をプラットフォームにして……」
構想をブツブツしていたら、エルナンが的確に指示を出してくれた。俺は彼の指示に従ってマーモにお願いするだけという簡単なお仕事だ。
頼りになり過ぎる友人に足を向けて寝れないぜ。
掘り進めているわけなので、膨大なブロックが出るわけでそいつをどのように効率的に処理するのかも重要なんだよな。
ところどころで地上に繋がるレールを敷いてブロックを外へ排出する、とかでいくかなあ。後に城壁とかバベルの塔みたいな天にも届かんとする塔を建てたりとかで利用できんものか。今は時間がないので、お楽しみの建造物は後回しだな。
「適当にブロックの排出用のブロックレールを敷いて行くでいいかい?」
「ありがたい、後に利用しようかと思っているから、その時もブロックレールで運ぶことができそうだからそのまま排出用のブロックレールも置いとこうかなと」
「問題ないけど、外に繋がる穴は塞いでおいた方がいいかもね」
「確かに、害獣が入ってくるかもしれないものな」
「余り心配はしていないけど、降雨の問題も出てくるかもね」
「そこは水の流れる路を作っとけばいいか」
細かいところは後からだよな。思ってもいないところで運搬を妨げる何かが出てくるかもしれないし。そのたびに対処をしていくしかない。
「もう一つ、忘れちゃならないことがあるよ。アリサ、馬車の食料は何日くらいもちそうかな?」
「あと一週間くらいはいけます!」
「思ったより残っているね。先に急ぎ三日月湖まで向かうのも考えた方がいいかもしれないね、どうだい、クリス?」
それは俺も考えていたよ。渓谷を含め砂漠地帯では極一部の地域を除き、食材を集めることもままならない。
食料が尽きたら干上がってしまう。そうなる前に食料を確保することは必須だ。
「う、うーん。今日のところは進めるだけ進んで、どれだけの距離を稼げるか見てからかな」
来た道を戻れば砂漠地帯の入口までそう時間がかからず移動することは可能だ。ここに来るまで途中からブロックレールを敷設してきたからね。
三日月湖から掘り進めた方が食料の心配をせずに済むことは鈍い俺でもさすがに気が付いている。
だけど、だがしかし、せっかく渓谷まで来たのにトンボ帰りするというのはなんだか悔しいじゃないか。
◇◇◇
あれから一週間が経過した。
工事は順調そのもの。最初の頃、トンネルにモンスターが侵入してきたから、穴を塞いでから工事をするようにしたり、と多少のトラブルはあった。
幸い、地下水脈に当たることもなく掘り進めることができている。
トンネルの位置は地上から五メートルほど下を高さを変えずに真っすぐ進めているが、今のところ地上に出そうになったりもしていない。
案外高低差がないのかな?
え? モンスターなんて渓谷にいたのかって?
いるのかもしれないけど、俺はまだ見ていないな。はは。
もう、言わなくても分かってるだろ、そうだよ、結局、三日月湖まで移動して新たなスタートを切ったんだよ。
掘り進める、ただ無心に。単純作業が続くかと思い油断していたら、時折トラブルが起きるので油断ならない。
「お、おおおおお」
「クリス様、エルナン様、わたし、感動です!」
勢いよく飛び込んできたアリサと熱い抱擁をかわし、続いてエルナンとも、とにじり寄ったら両手で遠慮された。
着工から20日目、渓谷側から掘ったトンネルと三日月湖から掘り進めたトンネルが繋がったのだ!
「エルナン、残りあと何日あるのかな」
「残りは二週間と少しかな。整えることができるものから整えて行かなきゃだね」
「おおっし、ここまで来たら何とかなる」
「ブロック貨車を運ぶ実験からやろうか」
よおおおっし。虚無のトンネル掘りが終わったので俺のテンションはかつてないほど高くなっている。
今なら何でもできそうだぜ。
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