第1話 君と出会う時は近づいていた

 その後、君との手紙は一ヶ月続いた。お互いの名前も知らないまま、毎日手紙を書いていく。愚痴だったり、うれしかったことだったり。友達と呼べるような人がいない私にとって、君の存在は、心の支えになってた。

「お、今日も来た」

 気づけば毎日、朝起きたら机の上を見るのが日課になっていた。

「今日の手紙はなんて書いてあるかなー」

 『たすけて』

「え、、、え?」

 そこには見たこともないくらい焦った字で、書いてあった。驚いた。君からの文章は、いつも落ち着いていたから。よく見てみれば、いつもの高級そうな紙じゃなかった。

「どうしようっ」

 急がないと、君と手紙が書けなくなる。君と話せなくなる。君と会えなくなる。最悪の事態が頭をよぎる。

「助ける」

 私にできることはそれしかない。でもどうやって。私の本好きがここで発揮された。考察が大好きな私は、思いついた。もしかしたら、、、

「封筒を通れば、こっちに来れる?」

そうだ。君は言っていた。封筒に入れておいてくれと。なら、封筒をどうにかして、人が通れる大きさにすれば、君はこっちの世界に逃げることができるんじゃないか。

「どうにかして、穴を大きくしないと。」

 でも切らずに、大きくするのは無理だ。望みをかけて、細い紙にしてつなげて、ドアみたいに壁に張り付けた。

「お願い。うまくいって!」

 夜、私の部屋は光に包まれた。

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