終末、明日でいいや
いぬのいびき
第1話「ラザニエルとソルソル」
世界を終わらせる天使、ラザニエルは今日も終末を一日遅らせることにした。
神様からは『地球がいらなくなったら、いつでもラッパを吹いておじいちゃんを呼ぶんじゃよ。そしたら回収して、処分しておくからの』と言われているし、まあ、確かに地球には飽きたしオワコンだなと思わないこともないのだ。
だが、彼の同居人が地球を気に入っているから、あと一日だけ様子を見てみよう、あと一日だけ、といつまでもいつまでも終末のラッパを吹くのを渋ってきた。
全ては地球を気に入っている同居人、一般悪魔のソルソルのためだけに。
「ねーソルソル、遊ぼ?マイ○ラしよ?」
「んー、今いいとこだから。もうちょいで『電子レンジの新しい悪用法』が見つかりそうだから」
「そんなんいいからさあ。マイ○ラしよ?」
築60年、1DKのボロアパート。
ヨギ○ーに寝そべって『電子レンジの新しい悪用方』を考える、テンションの低い茶髪のカルマヘアの悪魔に、彼よりも二回りは図体のでかい、六枚の羽根を持つ末っ子気質な銀髪のツーブロックの天使がちょっかいを出す。
「先にマイ○ラしててよ。俺、来期までに悪用法見つけないと上司に怒られるから」
「前もそんなこと言って、電子レンジでスマホをチンすると充電できるってデマ流してたじゃん。あれもう無効なの?」
「最近の人間はデマ見抜くの早いんだよ。だから、根本的に『悪』なことを早く見つけないと」
「チンするとWi-Fi切れるってだけで満足しとけばいいのに」
「いやもっと、科学兵器として使えるレベルの、爆発する系を求められてんだわ。上司も無茶言うよな」
「卵チンしたら爆発するよ?」
「それも対策されてんだわ。だから、もっと科学兵器として……うーん、今度こそいけそうか?ラザ、ほんとごめん。先にマイ○ラやってて。森と都市を同居させたエリア、完成させといて」
森と都市を同居させたエリアは、二人で作ると約束していたのに。
ラザニエルはひとりでマイ○ラをする気にもなれず、冷蔵庫から牛乳を出して電子レンジでチンした。
「これで科学兵器並みの爆発ねえ。ホンッット、悪魔の上司も無茶なこと言うよ」
牛乳は、熱々で表面に膜が張っている。
電子レンジは食品を温めるだけの機械。危険な使い方といえば、先ほど挙げたように卵かスマホをチンするくらい。
そりゃまあ、確かに悪魔は『人間が発明したものの悪用法を考えて、悪い人の夢枕に現れそれを教える』という仕事をメインにしているが、いくらなんでも電子レンジはない。
「ダイナマイトでも温めたら?でもそれ、そのままダイナマイト投げたほうが早いかな?」
ソルソルは答えない。
完全に仕事に集中してしまったようだ。
「おーい、ソルソル?」
「ちょホント待って、もうすぐ、もうすぐ思い付くから……」
「ソルソル?」
「…………」
ついに黙ってしまったソルソルに、ラザニエルはぷっくー!と頬を膨らませ。
「もーっ!僕のこと放ったらかしにしすぎ!これから30秒見つめる刑ね!」
そう言って、神が200年かけて創り上げた一寸の狂いもない美貌で、ラザニエルは至近距離からソルソルと見つめ合う。
「…………!!!」
あまりの美しさに、ソルソルは息を飲んで固まってしまう。
俺、なんでこんな美しすぎる天使と親友なんだろう。なんでこんな芸術品みたいなご尊顔を至近距離で見せられているんだろう。
悪魔の脳裏には宇宙が広がった。
ちなみに、この世で最も美しい顔を見て、まだ3秒しか経っていない。あと27秒も眺めていたら、顔の良すぎる親友のお願いをなんでも聞いてしまいそうだ。
「ソルソル、僕ね、ほっとかれるの嫌いなの」
「お、おぅ……!」
「だからね、マイ○ラしよ?」
ソルソルは大嫌いな七三メガネ上司と大切な親友を天秤にかけ、上司なんて知るか!と匙を投げた。
ラザニエルの美しい顔を見ていたら、ただの冷酷顔の上司の怒りなんて些事にしか思えなくなってきたのだ。
「ん。しよっか、マイ○ラ」
「よっし!じゃあソルソルは広場の噴水おねがい」
「ラザはビル群作って」
「おっけー」
「とりあえず完成するまで終末はナシで」
「明日まではかかるよね。じゃあ今日はやめとく」
こうして今日も、電子レンジは科学兵器にならなかったし、世界の寿命も一日だけ伸びた。
地球上の全ての生命は、そんなことなどまるで知らずに今日も一生懸命生きている。
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