空の記憶はどこにある?

白野さーど

第一章

第1話 夢からの目覚め

 ――…空……ッ!!


 ぼやけた世界で、誰かが叫ぶ声が聴こえる。


 ――目を…――開け……空…――――


 その声が……遠くへ……遠くへと…………消えていく。


 ――あれは…――――誰だ?




「んっ……ふわあぁぁぁ~……」


 六月最初の朝は、謎の夢と朝一の大きな欠伸から始まった。


 ――…また、あの夢か……。


 天井を見つめながら思い浮かべるのは、ついさっきの光景と……時々、夢に出てくる謎の声だった。


『――目を…――開け……空…――――』


 ――誰なんだ……。


 どこか聞き覚えのあるその声の主を思い出そうにも、頭に靄がかかって行く手を阻まれる。


「んんー……」


 見えない、掴めないもののことを考えても仕方ない。


 手で髪をかきながら体を起こすと、首から肩にかけて痛みが走る。


「痛ててぇ……」


 握った手でトントンと叩くが、大した効果はなかった。逆に痛みが増した気がする。


 ――今度、新しい枕でも買いに行くとすっか……。


 と思いつつも、なかなか買いに行こうとしない。


 ――ほんと、ダメだな……。


「ああ……あ……っ」


 情けない声をこぼしながら、枕元の棚に置かれているリモコンで部屋の明かりを点けた。


「うっ……」


 室内を照らす光は、寝起きの目には刺激が強かった。


 ――眩しっ……。


 パチパチと何度か瞬きをすると、肩をほぐしながら部屋を出た。

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