第肆章 招喚前日 ー【昊天上帝】の手のひらの中の【炎帝】ー
【太上老君】は、腰に手を当てて仁王立ちをしてドヤ顔をした。
太上老君「フッフッフッ………君たちは今、この卓上の料理を食した!私は、つい最近【転生術】を改良していてね………君たちには、実験体になってもらったよ!」
白竜王「もしや!この饅頭!」
【白竜王】は、【太上老君】がお土産に持参した【
【太上老君】は、チッチッチッと人さし指をユラユラ揺らしてまだまだだね、と言う。
太上老君「【玉兎餅】は、私の大好物だよ!こんな私が1人で平らげてしまいそうなものを【転生術】の材料に使うワケないじゃないか!」
好物というワードは、ものすごく説得力があるが【太上老君】が1人で平らげようと考えていたことに、一同はドン引きする。
霊宝天尊「これ全部1人で食べたら太るよ」
【霊宝天尊】がもっともらしいことを言ったが、【太上老君】は得意げな表情をする。
太上老君「私のカロリーは頭脳!つまり、脳がカロリーを消費するから私は頭を使っていれば、いくら食べても太らないのだよ!」
【太上老君】は、だから私は怠惰に日々過ごせるのだ、と言った。
瑤姫「頭を使えば、食べて寝てるだけの生活でも太らない!なんてウラヤマ!」
【瑤姫】は【太上老君】を羨ましがっているが、彼女も太りにくい体質なので羨ましがられた【太上老君】は君がそれを言うのか、と微妙な表情をしている。
太上老君「前菜と主菜だよ」
【太上老君】は意外とあっさり白状した。
白竜王「前菜は【
貴方がたもグルなのか、と言う視線を【白竜王】は【玉鼎真人】と【太乙真人】へ向ける。
太乙真人「私は、調理しただけだ!」
玉鼎真人「私が仕留めたあの鳥………仕組んだのですか」
【太乙真人】は濡れ衣を訴えるが、【玉鼎真人】は狩りで獲った鳥が【伏羲】の創造した【霊獣】だったことに気づいた。
玉鼎真人「【老君尊師】、ハメられたことに対しては何も言いません。我々が迂闊だった………それだけのことです」
太乙真人「参ったな………あれ【崑崙十二仙】に
【玉鼎真人】は、今イイ感じに自己完結で満足していたが、【太乙真人】が忘却してしまいたかったことを暴露した。
玉皇太子「ほう………中々オモシロいことになったな!【崑崙山】が集団ストライキか」
【玉皇太子】は完全にオモシロがって他人事だが、彼女も料理を食べているので当事者のはずなのにどこか余裕を感じる。
霊宝天尊「改良版の【転生術】の実験は既に進んでいる。最初に【術】を改良した私たち【三清道祖】が自ら実験体になり、【
【霊宝天尊】は、【三清道祖】の【知識】と【技能】の集大成で完成させた【新奥義】だと言った。
太上老君「名付けて【異世界転生術】!」
【太上老君】は、【天上界】、【人間界】、【修羅界】、【地獄界】、【餓鬼界】、【畜生界】の【六道界】の
太上老君「もっとも、【地獄界】、【餓鬼界】、【畜生界】はあまりオススメではない【世界】だよ。ちょっと旅行するだけなら社会勉強になるけど、永住するとなると中々に厳しい環境だからね」
【太上老君】は、【修羅界】は【戦争】が絶えないし【天上界】は1つ間違えば【地獄界】へ直行する仁義なき【世界】で、【転生先】として理想なのは【人間界】なのだと言った。
太上老君「主菜のお肉はね【フェニックス】という【西洋】の【不死鳥】だよ」
【太上老君】は、【西洋】の真新しい鳥なら知恵者で知られる【玉鼎真人】を欺けるだろうと【伏羲】に創造させたと言う。
【東洋】の【不死鳥】は炎を纏ったような紅蓮の姿だが尾の部分が虹色だ。【西洋】の【不死鳥】は全身が紅蓮の炎を纏った姿なのだ。尾の部分が異なるので、『お国違いの同種の鳥』とは気づかない。
玉鼎真人「貴方がたのことですから、その【転生術】は【異世界】に生まれ変わる
太乙真人「【西洋の不死鳥】とおっしゃいましたな………もしや【回生】!」
【崑崙十二仙】の頭脳派と称されるだけあって【玉鼎真人】と【太乙真人】は察しが早い。
太上老君「今はまだ【神仙】が対象になるけど、ゆくゆくは【人間界】の【人間】にも使えるように布教したい!」
なので【人間界】へ降りる【三清道祖】は自分だと【太上老君】は言った。
霊宝天尊「【世界】を維持する【三清道祖】が全員いなくなったら、【天界】は崩壊の一途だからね。私と【太元(玉皇太子)】は居残りだよ」
【炎帝】は暴走して【三清道祖】を暗殺しようと企みかねないから、【回生】を施したのは保険だと【霊宝天尊】は言ったが、結構ガチで暗殺の危機を感じていることは伝わって来た。
玉皇太子「【
【
楊戩「姉上………今、ものすごいことを言ったが………俺の聞き間違いか空耳か?」
祥「【
楊戩「【藍玉石の精霊殿】が【天界】を追放された件の………」
【
祥「【天帝一族】は、母親が子育てをせぬだろう。【侍女】が母代わり、教育係、身の回りを世話する」
【神竜・
祥「【太元(玉皇太子)】の時も【戩】の時も教育係の【侍女】は老齢の既婚者が務めていただろう。それが常識だ。万が一ということがあるからな」
【神竜・祥】の言う万が一とは、侍女との恋愛関係に発展する可能性だ。遊び人で【側女】を次々と【愛人】にしていた【神竜・祥】でさえ既婚の【女仙】や婚約者のいる【女仙】は恋愛対象外としていた。既婚────────────婚約者有りも既婚扱い────────────というだけでボーダーラインが引かれて歯止めになるのだろう。
祥「私は一時期、【
献身的な【青蛾】の支えにより【炎帝】は立ち直ったが、常に【青蛾】を側から離さなかったのだと【神竜・祥】は言った。
楊戩「それって、依存したんじゃ………ああ、だから恋心を抱いたと
【楊戩】は【人間界】にいた時に妻がいたので【竜吉公主】とは2回目の結婚になる。ゆえに男女の恋愛のあれやこれやには、そこそこ精通していた。【神竜・祥】の話から【炎帝】の本命は【青竜王】で【藍玉石の青蛾】は姉のように依存する相手だとわかった。
玉皇太子「しかし【天宮】は、クセやアクの強い連中が集まる『伏魔殿』だ。【青蛾】を【皇太子(炎帝)】を誘惑して惑わせた『悪女』と言って、ありもしない噂を流したのさ」
【玉皇太子】は、【青蛾】は【叔父御殿(祥)】の【愛人】だから【シン(炎帝)】如きを誘惑するなどあり得ない、と嘲笑した。
祥「【青蛾】は、当時の【天帝】だった【コウ(昊天上帝)】へ
【藍玉石の精霊・青蛾】が【人間界】へ降下したことは公然の事実で、【天界】では皆が知っている。しかし、その理由は当時【皇太子】だった『【炎帝】を誘惑した罪で【人間界】へ追放』という罰だと伝わっていたが、真実は自らの意思だった。
祥「ところが、【宮仕え】の一部の阿呆が【コウ】が【青蛾】を追放したなどと噂を流しよって………これを頭の血の巡りが悪い【シン】が噂を鵜呑みにして、挙句に【コウ】の毒殺を
どこの世界にも迷惑な噂を流す阿呆と、きちんと確かめもせずに鵜呑みにする頭のイタイ者はいるから困ったものだと、【神竜・祥】は両手の手のひらを肩の位置で上に向けるヤレヤレのポーズをする。
楊戩「企んだ?………
【楊戩】は【神竜・祥】の言葉から【炎帝】は毒殺を実行していないのかと質問する。
玉皇太子「毒殺しようとしたがな未遂だ。………あんな先の見通しの甘い奴が、毒殺を成功するわけがないだろう」
楊戩「俺を暗殺しようとしたり、処刑宣言したり、結構大胆なヤラカシやってるんだけど………」
【楊戩】はツッコむが、やはりそれも事が起こる前に手を打たれているので、見通しも甘いがワキも甘いのだろう。
竜吉公主「【玉皇殿下】、貴方様のような有能な方を差し置いてなぜ【
さっさと退位させてしまえばよろしいのよ、と【竜吉公主】は駄々を捏ねて他人の言葉を聞かない子どもが【世】を治めているようなものだ、と遠慮容赦なく斬り捨てる。
祥「それはな………私と【コウ(昊天上帝)】と【玉麗(天帝妃)】と【
【神竜・祥】は、当時の【先代竜王(祥)】、【天帝(昊天上帝)】、【天帝妃(玉麗天后)】、【竜王(青竜王)】たちの『密約』で、生まれたばかりの嬰児(炎帝)は【天帝】と【天帝妃】の第三子とすること、そして第三子が成人後は【天帝】に即位させ3000年間帝位に就かせること、最後に【昊天上帝】は退位して【天帝位】は娘の【玉皇太子】が継ぎ彼女から第三子に【天帝位】を譲位し期日を迎えた際は【玉皇太子】の采配で第三子の治世を継続か退位かを決定せよ、と【三清道祖】立ち会いの元での誓約をしたと話した。
竜吉公主「その誓約には【
【
玉皇太子「【竜吉】よ、そう目を吊り上げるな。美しい顔がトンデモナイことになっているぞ」
【玉皇太子】が軽口を言うのを、はぐらかそうとしてもそうはいかないと言わんばかりに【竜吉公主】は睨みつける。
太上老君「アハハハ………【ちーちゃん】オモロー!」
【太上老君】は、手を叩いて楽しげに笑っている。【ちーちゃん】というのは【竜吉公主】のことだろう。
この状況は笑う所ではないのだが、即興で【竜吉公主】にニックネームを付けた【太上老君】の空気を読まない行動に【竜吉公主】は【玉皇太子】へ食ってかかるのをやめた。
東王夫君「【老君尊師】、娘が貴方様より【
【東王夫君】は、【ちーちゃん】という可愛すぎるニックネームに礼を述べるが、実はこれは『名付け』という【儀式】に該当することだった。
横文字でニックネームと呼ばれる人名を簡単に呼びやすくすることを【神仙の世界】では【渾名】と呼び『名付けの儀式』なのである。そして、この【渾名】を付ける【儀式】の司祭役は【太上老君】なのだ。
【道徳天尊】の【仙号】を持つ【太上老君】の付けた【渾名】は、【神仙】に活力を与える。たとえそれが、付けられた者に不本意な【渾名】であっても【太上老君】が親しみを込めて『名付け』をしたという事実が尅つのだ。
それが解っているので【竜吉公主】も【
【楊戩】は、別に自分は【天帝】になりたいと思わないから忘れてくれているのは好都合だと言って、【竜吉公主】にはもっと気になるワードがあっただろうと言う。
楊戩「『3000年』という歳月に何か意味があるのか?【人間界】では途方もない長さだが、【天界】では中途半端な数字だな」
【長命種】が住む【天界】では3000年は世代交代には、まだ早い時期なのだ。
玉鼎真人「3000年は、世代交代には早いが新たな【生命】が生まれ育む歳月がちょうどその年数だ」
【玉鼎真人】は、【竜王一族】の内乱は正統後継者の陣営は【竜王一族】だったが、叛乱者の【
太乙真人「他種族の連中は、内乱に乗じて【竜王一族】に大打撃を与えようと
その他種族たちには当然、家族がいる。【戦】で戦士した者の家族なので
太乙真人「【神仙】たちは、実力主義の弱肉強食の『仁義なき世界』だ。『勝者が正義』で『敗者は悪』だ。その恨みは【祐殿】へ向けられる」
しかし恨みを向ける【祐】は戦死した。そうなると、矛先は【祐】の不義密通相手の【白真珠の精霊】と彼女が宿した子だ、と【太乙真人】の言葉は正論だと誰もが納得する。
玉皇太子「【
【昊天上帝】は【戦】を起こしたのは父親で、それを子に背負わせるのは間違っているという尊い考えだった、と【玉皇太子】は言った。その時は【炎帝】は母親の胎内で確かに【戦争】を指示していない。
玉皇太子「3000年の【即位】期限は【シン(炎帝)】を護る為のものだ。【一神仙】ならば【シン】は簡単に遺族たちに葬られてしまう。しかし、【天帝】を害するのは【重罪】だ」
中には立場など関係ないと【刃】を向ける者もいるだろうが、3000年の間に新たに家族が生まれ育てているうちに多少は考えが変わる可能性はある、と【玉皇太子】は言った。
霊宝天尊「そして、考えが変わらなかった者は【妖怪】に変貌する。………そうなれば、【妖怪討伐】の名目で狩ってしまえるだろう」
太上老君「よく考えたよね。3000年は改心するのに必要な歳月………それでも改心しなければ【妖怪堕ち】の討伐対象………『さすコウ』!」
【霊宝天尊】は、【昊天上帝】はただ情けをかけただけではなく残党狩りも視野に入れていたと言った。【太上老君】の最後の『さすコウ』は、『流石コウ』の略だろう。『さすコウ万歳』と言って【太上老君】は【白竜王】と【瑤姫】を巻き込んで万歳三唱している。ドサクサに紛れて【神竜・祥】とノリで【伏羲】も参加している。
楊戩「【
【楊戩】は、逆賊の子【炎帝】を『生まれた子に罪は無し』と【天帝権限】で【昊天上帝】は我が子として引き取ったことは【賢君】と称されるだろうと考える。しかし、我が子として引き取った【炎帝】は【駒】だった。【竜王一族の内乱】に参戦していた種族は多く、把握しきれていなかったので残党狩りは難航していた。だが逆賊の子が【天宮】で生きていて成人後は【天帝】に即位し、【天界】で高い身分と贅沢な生活が保証されていることを知った戦死者遺族たちは一部は【天帝】という手の届かない相手に諦めるかもしれないが、大多数は恨みを膨らませて【妖怪堕ち】は必至だ。我が父ながら冷酷なことだ、と【楊戩】は誓約の中に自分に関する項目がなかったことに納得した。
楊戩「もしかして、俺の処刑問題も【
【楊戩】の言葉に、万歳三唱していた【神竜・祥】が万歳をやめて気づいたようだなと言ったので、誓約に関わった者は全員この事態を最初から見越していたことが判明した。
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