《音声記録》02





男:

こんなところで人に会えるとは思いませんでした。私はアドマイト。あなたがたの名前をお伺いしてもよろしいでしょうか。


シルバー:

シルバー。こいつはクロロ。


クロロ:

宇宙旅行者だよ。


アドマイト:

宇宙旅行! あなた方は勇敢ですね。


クロロ:

そうかな? みんな気軽に宇宙に行くと思うんだけど。


アドマイト:

なるほど。私が思っているよりも、人間の進歩というのは早いようです。


シルバー:

…待て。あんた、何歳なんだ。



(アドマイトが紅茶入りのカップに手を伸ばす)



アドマイト:

私が仕事仲間とはぐれてから、凡そではありますが、40年は経っているはず。


クロロ:

40年も、独りで?


アドマイト:

生憎ながら、3年ほど連れ添った相棒は、宇宙に連れてはいけませんでした。


クロロ:

よく生き残れたね。いっそ死んでしまいたいって、思わなかった?


シルバー:

言葉が過ぎるぞ、クロロ。


アドマイト:

お気になさらないで。退屈はしませんでしたし、独りでいることにも慣れましたので。


クロロ:

すごい精神力だね。私も見倣わないと。


シルバー:

何にせよ…帰るあて、あるのか?


アドマイト:

残念ながら、何一つ。


シルバー:

……そうか。クロロ、良いよな?


クロロ:

良いと思うよ。


シルバー:

この端末、あんたにやるよ。


アドマイト:

おや、これは……?


クロロ:

方位保存機だよ。母星ローディアの方角が保存されてるから、これならまっすぐ帰れるはずだ。


アドマイト:

それは、なんとも便利な道具が…。私に、くださるのですか?


シルバー:

あんたさえ良ければだが。


アドマイト:

お心遣いに感謝します。ですが、私はそれを受け取るには値しません。


シルバー:

それは、何故だ?


アドマイト:

40年という時間は、知った場所が知らないもので埋め尽くされるには充分すぎるのです。加えて、私が帰るべき場所も無くなってしまっているでしょう。


シルバー:

それは、そうかもしれないが。


アドマイト:

それならば、このまま宇宙という未知をこの眼に納めて逝くというのも良いでしょう。



(何かを思い立ったように立ち上がるクロロ)



クロロ:

私たちの船のお客さんになって欲しいな。


アドマイト:

それは、どういう…?


クロロ:

私たちとあなたなら、きっともっと楽しく過ごせると思うな。


シルバー:

ああ、そういう…。確かに、1000人乗りに二人しかいないのも、味気ないな。


クロロ:

ね、ね。どうかな。



[音声記録容量限界]

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