落ちこぼれな俺の【遺物回収(ガラクタひろい)】スキル、実は伝説の英雄の力を継承できる唯一のチート能力でした~無能扱いから一転、英雄学園の頂点に駆け上がります~
☆ほしい
第1話
誰もが【ギフト】と呼ばれる異能力を持つ世界。
その力の優劣が、人の価値すら決めつけてしまう。
「そこまで! 勝者、ジン・コードウェル!」
教官の野太い声が、模擬戦闘フィールドに響き渡った。
もうもうと立ち込めていた土煙がゆっくりと晴れる。
そこには一人の生徒がぐったりと倒れていた。
勝者としてその場に立つのは、燃えるような赤髪を逆立てた少年、ジン・コードウェルだ。
彼の体は、鈍い銀色に輝く鋼のように硬質化している。
Aランクギフト【鋼鉄化】。
物理攻撃に対して、絶対的な防御力を誇る強力なギフトだった。
「ちっ、雑魚が。時間の無駄だったぜ」
ジン《じん》は舌打ちをすると、体の硬質化を解いた。
彼の周りからは、わっと賞賛の声が上がる。
「さすがジン様!」
「今の相手、Bクラスのやつだろ? それをああも一方的に!」
ここグランツ英雄学園は、未来の
生徒たちの実力は、ギフトのランクと戦闘成績によって厳格にクラス分けされている。
もちろん、ジン《じん》はトップクラスであるAクラスに所属するエリート中のエリートだった。
俺、カイ・アッシュトンは、その光景をフィールドの隅からぼんやりと眺めていた。
俺の周りには、誰もいない。
「おい見ろよ、Fクラスのカイだぜ」
「あいつ、まだ学園にいたのか。てっきりもう辞めたかと」
「ギフトが【
周囲の生徒たちが、俺を見てひそひそと笑う。
それはもう慣れてしまった光景だった。
俺のギフトは【
鑑定魔法の表示は、ただ一言だけ。
『触れた無生物を異空間に収納・取り出しできる』。
それだけだ。戦闘能力は皆無。
当然、俺のランクはF。
学園の最底辺であり、落ちこぼれの代名詞だった。
英雄の名家であるアッシュトン家に生まれながら、このザマだ。
実家の家族からは、とうの昔に勘当同然の扱いを受けている。
「次の組、前へ!」
教官の号令で、俺たちFクラスの模擬戦が始まる。
対戦相手と向かい合う生徒たちは、皆どこか自信なさげだった。
ギフトが弱いというだけで、ここでは誰もが落ちこぼれ扱いを受ける。
「おい、カイ」
不意に、後ろから横柄な声をかけられた。
振り返ると、そこに立っていたのは先ほどまで戦っていたジン《じん》だった。
取り巻きを数人引き連れて、にやにやと嫌な笑みを浮かべている。
「なんだよ、ジン《じん》」
「お前、さっきからアリス様のことジロジロ見てただろ。身の程を知れよ、ゴミが」
ジン《じん》の視線の先には、一人の少女がいた。
プラチナブロンドの髪を風になびかせている、清楚で美しい少女。
アリス・ヴァンデルだ。
彼女は、この学園で数人しかいないSランクギフト【聖女の祈り】の持ち主だった。
学園のトップエリートでありながら、誰にでも分け隔てなく接する。
その優しい性格で、男女問わず絶大な人気を誇っていた。
ジン《じん》も、その熱烈な信奉者の一人だった。
「見てないよ。俺はただ、授業を見てただけだ」
「嘘つくんじゃねえよ。お前みたいな落ちこぼれが、アリス様と釣り合うとでも思ってんのか?」
「そうだそうだ!」「身の程を知れ!」
取り巻きたちも、げらげらと下品に笑いながら囃し立てる。
俺は何も言い返さなかった。
ただ黙って彼らの言葉を聞き流す。
ここで言い返したところで、面倒なことになるだけだからだ。
「まあいい。どうせお前は、次の実戦評価テストで退学だ。それまでせいぜい、学園の空気を吸っておくんだな、ガラクタ拾い」
ジン《じん》はそう言い捨てると、満足そうに去っていった。
俺は一つため息をつく。
そして再びフィールドに視線を戻した。
アリスが、心配そうな顔でこちらを見ている。
俺は彼女と目が合うと、小さく首を振って「大丈夫だ」と伝えた。
彼女は、この学園で唯一、俺を普通に扱ってくれる存在だ。
幼い頃、一度だけ話したことがある。
それだけの関係のはずだが、彼女は俺のことを覚えていてくれたらしい。
授業が終わると、俺は誰とも言葉を交わすことなく、一人で教室を後にした。
落ちこぼれの俺に、友人と呼べる人間はいない。
向かう先は、学園の巨大な図書館だった。
実戦で役に立たない分、せめて知識だけは詰め込んでおこうと思ったのだ。
過去の英雄たちの活躍や、ヴィランの弱点。
分厚い本を読み漁るのが、俺の唯一の日課になっていた。
図書館の古びた机で本を読んでいると、不意に司書の先生に声をかけられた。
「カイ・アッシュトン君だね。ちょっと、君に頼みたいことがあるんだが、いいかな」
「はい、なんでしょうか」
「第五倉庫の掃除をお願いしたいんだ。しばらく誰も使っていなくてね。埃だらけで困っている」
第五倉庫。
学園の敷地の最も奥にある、古い倉庫だ。
そこは、生徒たちの間でこう呼ばれていた。
『遺物倉庫』、と。
かつて英雄が使っていたとされる武具や道具が、価値のないガラクタと一緒に保管されている場所。
もちろん、そこに眠る遺物とやらに、本当に力があるなどと信じている者は誰もいなかった。
今の時代、全てはギフトの力で決まる。
過去の遺物など、時代遅れの骨董品でしかないのだ。
「君のギフトは【遺物回収】だったね。ガラクタの掃除には、うってつけだろう」
先生は、悪気なくそう言った。
俺のギフトが、ただの便利な収納スキルだと思われているのは、学園の誰もが知るところだ。
「…分かりました。やっておきます」
俺は静かに頷くと、本を閉じて立ち上がった。
司書から古びた鍵を受け取る。
俺は一人、第五倉庫へと向かった。
夕暮れの光が、俺の影を長く伸ばしていた。
第五倉庫は、噂通りひどい有様だった。
鍵を開けて扉を押すと、むっとするような埃っぽい匂いが鼻をつく。
中は薄暗い。天井からは蜘蛛の巣がいくつも垂れ下がっていた。
床には、用途の分からないガラクタが山のように積み上げられている。
錆びた剣、欠けた盾、ボロボロのマント。
どれも、歴史の教科書で見たことがあるような、古いデザインのものばかりだった。
「これは、骨が折れそうだな」
俺は独り言を呟くと、袖をまくって掃除に取り掛かった。
まずは、床に散らかったガラクタを片付けることから始めよう。
俺はスキルを発動した。
「【遺物回収】」
床に落ちていた錆びた兜に触れる。
すると、兜は淡い光に包まれて、すっと姿を消した。
俺の意識の中にある異空間に、ちゃんと収納されているのが分かる。
これは確かに、掃除には便利だ。
俺は黙々と、ガラクタを一つずつ収納していった。
何時間経っただろうか。
窓の外は、すっかり闇に包まれている。
倉庫の中も、月明かりが差し込むだけになっていた。
おかげで、床のほとんどが見えるくらいには片付いた。
「ふぅ、こんなものかな」
俺が額の汗を拭った、その時だった。
倉庫の最も奥、ガラクタの山に埋もれるようにして、何かが鈍く光っているのが見えた。
なんだろう?
俺は好奇心に駆られて、その光に近づいていった。
ガラクタの山をかき分けると、そこにあったのは、一本の古びた剣の
木製で、何の装飾もない、ごくありふれた鞘だ。
ただ、表面に刻まれた紋様だけが、月明かりを反射して、かすかに光を放っている。
俺は、なぜかその鞘から目が離せなくなった。
何かに引かれるように、そっと手を伸ばす。
そして、指先が鞘に触れた、瞬間。
―――ズクンッ!
脳を直接、鷲掴みにされたかのような強烈な衝撃が走った。
「ぐっ……!?」
頭の中に、膨大な情報が濁流のように流れ込んでくる。
知らないはずの剣の構え。
見たこともない剣技の数々。
そして、ある一人の男の、壮絶な生涯の記憶。
『我が剣は、弱き者を守るために』
凛とした、力強い声が頭の中に響き渡った。
目の前が、火花のように明滅する。
何が起こったのか分からない。
俺は激しいめまいに襲われて、その場に膝をついた。
心臓が、あり得ないくらい速く鼓動している。
「はぁ……はぁ……な、なんだ、今のは……」
息を整えながら、俺は自分の身に起きた変化に気づいた。
視界の隅に、半透明のウィンドウのようなものが見える。
ゲームのステータス画面によく似た、ギフトの詳細表示だった。
そこには、信じられない文字が浮かび上がっていた。
【ギフト:遺物回収(ランクF)】
・触れた無生物を異空間に収納・取り出しできる。
・【隠し機能:遺物継承】が解放されました。
「……隠し、機能……?」
俺は呆然と呟いた。
今まで、こんな表示は一度も見たことがなかった。
【遺物継承】。
一体、どういうことだ。
俺がさらに表示を読み進めると、そこには驚くべき説明が書かれていた。
【遺物継承】
・歴史上の英雄や偉人が愛用した「遺物」に触れることで、その人物の能力・技術・経験を一定時間、自身に憑依させることができる。
・継承する能力は、遺物の保存状態や伝説の知名度によって変動する。
・現在継承中の遺物:『剣聖アークライトの鞘』
・継承可能スキル:【アークライト流剣術Lv1】【縮地Lv1】【心眼(偽)】
「……嘘だろ」
思わず、声が漏れてしまった。
剣聖アークライト。
五百年前に活躍したとされる、伝説の英雄だ。
彼の剣技は神の域に達していたと、数々の英雄譚に記されている。
その剣聖の力を、俺が、今、受け継いでいるというのか?
俺のギフトは、ただのガラクタ拾いじゃなかった。
歴史に埋もれた英雄たちの力を、その身に宿すことができる。
唯一無二の、とんでもない能力だったのだ。
俺は震える手で、掃除用に立てかけてあった一本の
そして、脳内に流れ込んできた記憶の通りに、それを構えてみる。
不思議と、体は自然に動いた。
まるで、何十年も剣を振るい続けてきたかのように、しっくりと手に馴染む。
俺は目の前の空間に向かって、箒を素早く一閃した。
特別なことは何も起こらない。
ただ、空を切る音が、ひゅっと鋭く響いただけだった。
「……だよな。そんな簡単に……」
俺がそう呟きかけた、その時。
俺が箒を振った先、数メートル離れた場所にあったガラクタの山が、ズサッと音を立てて崩れ落ちた。
よく見ると、山の一番上にあった木箱が、綺麗に真っ二つに断ち割られている。
その断面は、まるで鋭利な刃物で切られたかのように、とても滑らかだった。
「…………」
俺は言葉を失った。
自分の手の中にある箒と、真っ二つになった木箱を、ただ交互に見つめることしかできなかった。
これが、剣聖の力。
これが、俺の本当のギフト。
最低ランクの落ちこぼれだと、ずっと蔑まれてきた俺の力が、今、覚醒したのだ。
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