第5話 喜三郎

 小笠原長時の三男で通称、幼名小僧丸は清吉と同年代であったから、常に共に遊び、学び、そして武士として剣術、馬術等をして暮らした。


 小僧丸と良く間違えられたのが清吉であった。

 顔立ちが似ていたせいもあった


 長時の長男の豊松は清吉の兄の喜一郎達と学び、清吉はこの小僧丸、後の喜三郎と日々つるんでいた。


 だから、祖父の宗延は清吉を良く間違えて小僧丸と呼んだ。

 呼ばれる度に憤慨する清吉だった。

「小僧丸では無い!」


 しかし、兄は文武両道だし豊松も笛が得意

その上、小僧丸に至っては、近くの寺の僧侶も褒めるほどの頭脳明晰だし、その上、小笠原流弓馬術の名士になるだろうと噂される程、武士らしい武士の子供であった。


 父の小笠原長時もこの喜三郎に将来を託していた様だった


 でも父親に最後まで従ったのは長子の豊松で、後に喜三郎は、父とは別の道を単身歩む様になるとは、この時は誰も知らなかったのであった。


 その喜三郎の武士としての強さは後に、徳川の姫を家中に貰い、徳川時代が終わるまで、潰れかかった小笠原家を建て直して、後に元にあった小笠原家の城も大きくする功績に繋がるとは、この時の清吉達には夢にも思わない事であった。


 喜三郎に比べて、清吉は大の馬嫌いで、勉強も算術以外はまるで興味無しで、一人浮いた存在だった。


 周りの冷ややかな眼差しをいつも無視して、暴れ回っていた清吉。


 それを祖父の中島宗延だけは、こう呟いた。


「あの子は、いづれは一番の大物になるだろう、何しろ考える事が他の者と違い、何と斬新なんだろう、、、」


 実は清吉には人には知れず秘密の力があった。


 それは、少し未来が見えているのだ。例えば分かれ道があるとする。

どちらが良いか感じる事が出来た、その上、清吉がいると、必ず人が何処からが集まって来るのだ。


 笛を吹いたら人が来る、そんな様な事が多々あった。


 この不思議な力は、後に清吉の将来に多いに役立つのであった。


 祖父は、その能力が清吉にある事がわかっていたのだろう、実はその能力こそ祖父から受け継いだものであるから。


 しかし、今の小僧丸と間違えられる清吉は、他の子供達と元気よく飛び回る少年の一人であった。

 側には拾ってきた何匹の犬も一緒に駆け回ってた、その後をすばしこい速さで走る子供達の顔は本当に輝いてみえる。

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