小笠原家の内情

🍀貴船 汐音🎄

第1話 仁科の御料人

 南殿は清吉が生まれた時にお祝いを頂いた、小笠原長時の正室の仁科盛能の娘の仁科御料人の住まいへ参上した。

長い廊下を経て、御料人の住まいは整然としてその上、何か落ち着くのを感じた。


 南が御料人このように話をするのは久しぶりであった

 仁科家は安曇野にある周りを山々に囲まれた雄大な土地を持っている。

 そこで育った御料人は南と同年代の事あってか話しやすく人柄も穏やかで会うのもたのしかったのであった。

 特に御料人の簡素な生活感が好きであった。


「この間、送っていただきました、山菜で蕨と混ぜると美味しゅうございました」

「あれは山葵の仲間で辛くはなかったでしょうか」

「いえ、殿はお酒を召し上がるので重宝しました」

 と、含み笑いをする南

 一緒に御料人も笑う。


「それでは次は良き美酒など贈りましょう」

「それは嬉しいです」

「して、生まれた子は如何じゃ」

「はい、とても元気なわこです、でも……」

「何か心配事でもあるのか?」

「いえ……お百のことが……」

「武田に対抗するには致し方ないであろう」

「はい、そこの領地をおさめるのは当主も同然になるので、喜ばしいことですが」

「何か?」

「知っての通り、武田晴信は気代の策略家、それが心配です」

「小笠原家と仁科家が力を合わせて戦えば、武田なぞ雑作もなき事」

「はい……悪い予感がします」

「確かに、武田の策略には気をつけないと……特に家中のものにも目を配って」

「そうですね、武田のすっぱは本当に怖いです」

 遠くで笛の音が聞こえた

「あれは?」

「最近始めたのじゃ」

「豊松殿が?」

 御料人が頷く

「一節切の笛を手に入れ、励んでおる」

「ひとよぎれ……」

  豊松は御料人の産んだ長男であった。

 その拙い笛の音は、何とも哀れな音を奏でている。

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