あなた色に染まる
あおじ
第1章 恋の行方
コバルトブルー
トン、トン、トン。目的地を目指してリズミカルに階段を上っていく。
途中の踊り場で足を止め、壁に設置された大きな鏡を見る。
コバルトブルーのシャツワンピに同じ色のピアスとネイル。今日のわたしもあの人の色で染まっていて大満足だ。
思わず「えへへ」なんて気持ち悪い笑みをこぼしてしまい、慌てて周りを確認するもわたし以外誰もいなかった。
トン、トン、トン。あの人の所へ向かう為、また階段を駆け上がっていく。
トン、トン、トン。扉をノックする回数の正解がよく分からなくてとりあえずいつも3回鳴らしている。
「はい、どうぞ」
部屋の中から聞こえてきた声は心地いい重低音、わたしが堪らなく好きなあの人の声。
「失礼します」
毎度この第一声が上擦ってしまうのはドキドキと胸が高鳴り上手く喋られないからだ。
ノブを回して扉を開いていくと、ふわりとコーヒーの匂いが廊下へと漏れだしてくる。苦手だったこの匂いもすっかりと慣れてしまった。
「総合歴史学科3年の
部屋の中へと入って名前と来訪理由を告げると、こちらに背中を見せて机に向かっていたあの人──
「もう出来たのか。またお前が一番乗りだぞ、竹原」
そう言ってにっと口角を上げる先生の胸元にはコバルトブルーのネクタイが結ばれていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます