ユニタリボタン
中の人(カクヨムのすがた)
紀元前1034年
男「いやだから賭けていいって、俺はあれを押せる、押せないはずがない」
男は酒場で酒を飲みながら怪気炎を上げていた。
男はあらゆることに挑んできた。酒の一気飲みから、巨大な石を持ち上げてみる、猛獣と戦ってみる、誰も到着したことのない禁忌の山に登る……あまりの行動力に皆は皮肉を込めて彼を「勇者」と呼んでいた。
その彼が酒場で「ユニタリボタンの神殿」について言及したのだ。
男「いやだってよ、目の前にボタンあるんだよ、ボタン」
男「何人たりとて押せないって大げさにも程があると思うんだ」
友人は酒の肴をもぐもぐと食べながら答える
友人「やめときなよ、実際俺ぁ、あのボタンを押した奴を見たことがない」
友人「きっとあるんだよ、祟りとか」
男「なんだよ祟りって、お前信心深いな、俺はそういうもの信じないぞ」
男「なんなら今から行こうぜ! ユニタリボタンの神殿」
友人「これだから『勇者様』は困るぜ」
友人が呆れた顔で酒を飲み続けるのを背に、男は酒場を出た。男が酒代を踏み倒していることに友人が気づくことは永遠になかった。
男の足はユニタリボタンの神殿に向かっていた、特に何かが引き留めるとか、イヤな直感とかはなかった、自然と足はユニタリボタンの神殿に向かっていた。「押せない」という碑文もウワサもまるで嘘であるかのように。
男は神殿内に入る。
あった。
前方20メートルほど先だろうか、ごく短い碑文が刻まれたプレートがはめ込まれた台座がある。男は危なげない足取りでゆっくりと台座に向かって歩いていく。碑文の文字は読んだことがない文字だが不思議と読める。
『これはユニタリボタンである』
『何人たりとてこのボタンを押すことはできない』
そしてその「押せないボタン」が台座の上にはある。
何回見ても、ただのボタンだよな、これ。
男は指をボタンにあて、しっかりと力を籠め、押した。
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