天災
@kasukanahibini
始めに
ーーー災。
それは、我ら人類が生まれる遥か昔、太古と称される時代から、既に生命を
的確には、"現象" というべきか。
いつの時代であれ、生態系の頂点に君臨する圧倒的な生命も、神の機嫌には怯えるほかなかった。
そしてそれは、生命が多岐多様に進化を遂げ、ついに知能を手に入れた、
どれ程、高度に予測の精度を上げようと、どれ程、万全な準備を施そうとも、予想を上回るソレが来てしまえば、事前の予防など全て水の泡。
防御
ーーー淘汰という摂理。
人の分際で、自然に歯向かう事の愚かさを確かめさせてくれる言葉である。
だが、その諦めの良さ
時は、現時点から凡そ数世紀ほど前。
各放射による突然変異体か、それとも宇宙から訪れた刺客か。
ーーー得体の知れぬ獣が姿を現したのである。
小動物程度の比較的安全なものもいれば、ビル群を優に越える巨体もいる。
ここは、淘汰の例に従い、奴等に手を出さないのが鉄則、、、と思われたが、奴等は人類を襲い、土地を破壊し、未来を奪う。
ーーー人類とて黙って傍観できる程、賢くは無かった。
だが、之は言い逃れようの無い
ーーー人類は気づいたのである。
何故堪え忍ばねばならぬのか。
この理不尽に、
この不条理に、
殺られてばかりでは、埒が明かないと。
逃腰ばかりではいけないと。
抗わぬ限り、未来は無いと。
それに、災害を被った故の悲しみや喪失は、自然の摂理であると呑み込む他なかった。
だが、今回は明確な敵がいて、消し去るべき悪が居ると。
行き所の失った怒りを、鬱憤を、晴らすことの出来る絶好の機会ではないかと。
人類は完全な盾ではなく、圧倒的な矛を目指して立ち上がったのである___。
あの獣に対する研究も進められ、様々な憶測が飛び交ったが、的を得た結論には至らず、結局のところ、今尚正確に正体を掴めていない。
だが、打倒すべき敵として、明確な名称が無いのは困るとして、当時の人間は、『魔災』と名付けた。
命名としては、至って簡単。
不可解な点として、動力源が所謂、電気でも、生態的なATPとも基づかないとして、我等には摩訶不思議な動力であるとして、魔力の "魔" を。
そして、獣が持ち合わせる攻撃手段が、あまりに既存の災害と似ているとして、"災" を取ってきたのである。
その脅威である『魔災』を根絶させるとして、討伐組織が立てられるに至った。
それに伴い、平民の安住を約束するとして、最終防衛拠点となる城壁都市が構築された。
その都市が様々な変遷を遂げ、"帝国" と呼ばれるに至る。
だが長期的な戦闘による国力の低下、そして『魔獣』への脅威の薄れ。
事実、ここ近年の戦績は香ばしくなく、だと言うのに、城内に住む平和ボケした者達は危機とも感じていない。
城壁の外は、直ぐ様戦場であり、一刻ごとに尊い命が散っているにも
そんな地獄真っ只中で、仁王立ちする男が一人___
______この物語は、彼が秘める苦悩の独白から始まる。
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