異世界召喚されたけど召喚国が信用できないので気ままに生きることにしました

火川蓮

Prolog

Prolog1異世界に転移したみたいです

それは突然だった。

学校から帰り、家で宿題を済ませ、友達と日課のMMOを遊んでいたら、足元に魔方陣が現れ、気づくと王宮らしき大広間に飛ばされていた。


「どこだ……ここは?」


辺りを見渡すと、中世ヨーロッパ風の豪華な大広間。

周囲にはクラスのやつら、ほかのクラスの生徒、教師、そして見覚えのないスーツ姿の男女や中学生くらいの子たちもいる。

さらに私服の30代~60代くらいの男女までいる。

オレたちは高校生だけど、世代がバラバラだ。


ざっと数えると、三桁は越えているだろうか。

王族らしい人々が、オレたちを取り囲んでいた。


警戒しながら周囲を観察していると、さっきまで一緒にゲームしていた友達が声をかけてきた。


「おーい、ひろー?」


「お前も来てたのか……ゆう」


あ、自己紹介してなかったな。

オレは青山裕正(あおやま ひろまさ)。

至って普通の高校生だ。


声をかけてきたのは渡中優希(わたなか ゆうき)、オレのゲーム仲間の一人。

異世界の物語は好きだけど、実際に召喚されるのは困惑するばかりだ。

日本と違って物騒そうだし、平和な日本ですら危険なのに、こんな世界に飛ばされるなんて……。


ゆうと話していると、王様の隣にいた神官風の若い女性が声を上げた。


「皆様、お聞きください。

異世界より召喚された方々、事情も聞かずこの世界に呼んでしまい申し訳ありません。

ですが、我々は助けてほしいのです。

召喚した理由があります。

現在、この世界は危機に瀕しています。

魔王が現れ、人間国を滅ぼそうとしているのです。

魔王を倒すことができれば、元の世界に戻る方法も見つかるはずです」


聞き取れる範囲で要約すると、こんな感じだった。

……なんだか、テンプレすぎて胡散臭い。

しかも危機に瀕しているはずなのに、王様は太っていて、隣の王妃と王女は宝石や指輪をこれでもかと身に付けている。

緊張感の欠片もない。


「どうにかして、ここから抜け出す方法はないものか……」


こうして、オレたちの異世界生活が始まった。

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