四章 不毛すぎる推理
三巡目(一日目)
【三巡目】
一日目。
俺は森民の健康観察を手伝う途中で、隣を歩くユミルに声をかける。
「今ふと思ったんだけど。これだけ木々に囲まれて火事の心配とかないのか?」
ハッピーエンドの条件を考えた時、真っ先に思い浮かんだのが結末の状況だ。
【一巡目】の儀式中に倒れるユミルと、【二巡目】の
ユミルの死を回避することと、
そうなると、やはり【一巡目】と【二巡目】の結末の相違について洗うべき。いつどこで未来が確定したのか、その分岐点を見つけることができれば芋づる式で分かることが出てくるだろう。
元々今回でハッピーエンドにできるとは思っていない。何巡かは情報集めに専念するつもりだ。
ユミルは俺から受け取った観察ノートから顔を上げてこちらを見る。
「火事? ちょっとしたボヤ騒ぎが何回かはあったけど、避難しないといけないような
「そうか……さっき教えてくれた
「ないない。キヨツグはまだ見てないから想像できないと思うけど、
「じゃあ自然発火とかは? 聞いてた感じ特殊な樹木っぽいし」
「もしそんなことがあったら、今みたいに森の中でのうのうと暮らしてないでしょ」
「そりゃそうだよな」
【二巡目】の火事は自然的な現象ではないうえ、誤って点いたものでもない。だとしたら……。
「キヨツグは火事にトラウマでもあるの?」
「……ん? いや、べつに少し気になっただけだよ」
「にしては、やたら深刻な顔してるけど?」
「……えっと、俺自身は火事に遭ったことはないんだけど、友人が森の火災に巻き込まれた事があってな。聞けば人為的なものじゃないって言ってたから……」
しかし、(【一巡目】と異なる動きをした自覚はあるが)火災に繋がる動きを取った記憶はない。まったく一体どこでその流れを作ってしまったのか。分かれば推理が前進するのに。
俺の嘘話にユミルは「そんな大変なことがあったんだ……キヨツグが心配になるのも当然だね」と頷いて理解を示したあと、立ち止まる。
「でも安心して。この森はおよそ千年にも渡る歴史があるけど、人が犠牲になるような酷い災害は一度も起きたことがないから。もし不安なら他の人にも聞いて……」
「いやいや、ユミルの言葉だけで大丈夫だ。教えてくれてありがとな」
「そう? 他にも何かあれば遠慮せずに聞いてね。わたしで分かることだったら答えるよ」
「ああ、その時は頼む」
相変わらず純真で人想いだな。
そのあとは前回と同様の行動をし、ユミルの家に泊まらせてもらう運びとなった。
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