第27話;兵を見定めよう、その2

「早く小屋に戻りたいから早くしようネロさん」


「ニケか...」


《トラストニア・ニケ》 LV:44

役職:副店長 年齢:22

攻撃:661 防御:220

魔力:43319 魔法適正:9443

魔法防御:5622 俊敏性:643

幸運:999 知能:991


特性

血戦:自身が戦闘中の場合、攻撃を加えるたびに自身の魔法に威力補正

劣等なる衛兵:自身より魔力の低い生物を拘束することが可能

       自身より格下の相手を一定数取り込むことで真化する


「私も魔法でやるけど一つ変更していい?」


「なんだ」


「私の全力の一撃を放つからそれで私の特訓を決めてくれないか?」


「なにっ?」


ニケからの突然の突然の提案に驚いたネロだがそれも仕方のないことだろう

自身が想定したのとは違う回答、ニケなら必ずみんなと同じだと信じていたネロは驚きで心が満たされる


「私はあまり耐久に自身がなくてさ、だから全力の一撃で決めさせてほしい。別に普通にやれと言うなら普通にやるよ」


「ま....まぁいいだろう。その代わり期待以下だったらお前は3日間飯抜きだ」


「別にいいよ。それじゃあやろうか...ちなみに私は血魔法を使うからね」


その時、ネロは驚愕した。ニケからの超高出力の魔力

少しづつ赤に染まっていく髪、身にまとっていた魔力、ここら一帯も赤く染める

そして髪が完全に血のような赤に染まったとき、ニケの瞳には赤く光る目があった


「この姿は.....結構久しぶりかな」


(なんだ....何が起きた。おかしい...ニケのステータスが...ニケじゃない!)


《判別不可》 LV:判別不可

役職:判別不可 年齢:判別不可

攻撃:判別不可 防御:判別不可

魔力:判別不可 魔法適正:判別不可

魔法防御:判別定不可 俊敏性:判別不可

幸運:判別不可 知能:判別不可


ネロが見るステータス画面にはすべて”判別不可”という文字

これは彼女がニケではないなにかという証明でもある

だが姿はただ赤くなったニケ、別に声も話し方も性格も変わってはいない


「それじゃあ今から詠唱するから受け止める準備しとけよー」


「詠唱!?」


ネロは声にまで出して驚いてしまった

想定外すぎる事態、破格級の魔力出力

この状態でただでさえ威力の高い詠唱技を使われてはただでは済まないだろう


(まずい!この魔力、濃度だけで見たら私より数段上!そしてあの謎の変身。これを考慮して考えると詠唱技をまともに受けた場合、さすがの私も死ぬかもしれない!だが避けるのも違う。なにせ避けたらカッコ悪いからな。どうしたらいいんだ!)


そんな無理してまでカッコつけなくていいんですよ?だって死にたくないでしょう


(ネロという別人の強者を装ってる以上、ここでその認識を捻じ曲げるわけにはいかないの!)


そんなことを言っている間にもニケは詠唱を初めていた

足元から魔力が渦を巻くように立ち上り髪の毛を逆立たせる


「我が脈を巡りし赤き記憶よ 生と死の狭間にてなお熱を失わぬ契約の証よ 神々が終焉を迎えし刻、世界を貫いたあの裁きの形を今ここに」


ニケが手を上に掲げると赤い槍が形成される

血でできた真紅の槍、赤き輝きを放つ


「血は誓い、血は代価、血は運命 我が命の一滴一滴を束ね、虚空に鍛え上げよ 雷鳴の如き質量を持ち、星を穿つ槍へと昇華せよ」


(あぁやばい!なにか考えないと!転移か?いいやだめだ、それじゃ逃げたのと同じ。高速移動か?それもあのニケなら見破れそうだな。くっそー!どうすれば!)


「世界樹を裂き、神域を崩し、終焉を告げる一撃として敵の存在そのものを否定せよ」


(あぁー!なにかないのか!ここから動かずにあのヤバそうなやつを回避できそうな何かは!)


もう諦めて転移使ったらどうです?一瞬で行って一瞬で帰ってくればバレないでしょ


「来たれ!――終焉の血槍 《戦乱終末槍ラグナロクスピア》!」


ニケが手を振り下ろし巨大な血槍がネロの方向に迫ってくる


(なんかないのか!持ち物も特に意味がありそうなもの無いしどうしろってんだよ!)


依然として仁王立ちで腕を組んで立ってはいるが内心は超焦っている

どうすればこの攻撃を動かず受け止めれるか、どうすれば自身がカッコよく見えるか

そんなのどうでも良くないか?どうせ今のお前なら何してもカッコよく見えるだろ


(なんか、なんかスキルはないか!えーっと.....あ!これがあったか!ずっと使ってるのに忘れてた!)


そして3秒後槍が衝突した

周囲の地面は隆起し砕け割れる

地面も強く揺れ森に悲鳴が響く

そんな状況でも小屋の中では三人は布団にくるまっていた

あいつらもう何かしらの修行僧だろ。そこまでして出たくないのか?


「これでどうだいネロさん」


「あ、あぁ相当な威力だ。魔法の威力だけなら私より上かもしれん」


「おー、それは光栄なことだ」


ニケの姿は気づけば元の姿に戻っており、先程の赤い姿ではなくなっていた

そしてネロの内心、ヘラとしての心は汗ダラダラだった


(危っぶねぇ!もうちょっとで絶命するとこだった!このときだけは女神とこのスキルに感謝するわ!)


 四次元:”亜空間に入り一時的に休息したり”物の収納が可能


(これがなかったら絶対に死んでた!私の勘がそう言ってるから間違いない)


「それで?私はこれから何を鍛えたらいいの?」


「そ、そうだな....お前は魔法自体の出力は悪くない方だから無詠唱で使えるようになったらどうだ?シータもできるから彼女と一緒に特訓に取組むといい、うん」


「分かったよ、それじゃあ私はカリスを呼んでくるから」


(ふぅ...これで危機は去ったと思う。流石にカリスがニケよりも化物ってことはないと信じたいね)


小屋の中にニケが入っていくと同時にカリスが外へ出てきた


「お前が最後か、カリスと言ってたな」


「はい、今日からよろしくおねがいします!」


「あぁ、それじゃあお前も全力で私にかかってこい」


「あのー...一つお願いがありまして」


「なんだと?」


(まじかー!お前も私になにかお願いがあるのか!怖いぞ?さっきのこともあったから怖いぞ?)


「私自身のちゃんとした強さを把握するためにネロさんも武器を持って殺す気で戦ってほしいんです」


「.....何故?」


「私達の村が壊滅状態になってしまったのは、村に強い戦士がいなくてただただ見ることしかできなかったからなんです。だから私が強くなってみんなを守れるようになりたいんです!」


「...そうか、ではその覚悟に免じて」


ネロは四次元空間から白い剣レイヴンを取り出し剣先をカリスへと向けた


「この剣、レイヴンで貴様の相手をしよう」


(まぁカッコつけるだけつけといて多少は手加減しとくか。さてとカリスのステータスは...)


《カリス》 LV:3441

役職:受付嬢 年齢:221

攻撃:81223 防御:99999

魔力:5576 魔法適正:6

魔法防御:5534 俊敏性:4435

幸運:223 知能:9943


特性

剣聖:剣を持ってる場合自身のステータスが1.1倍

黎明:太陽の力を蓄える、夜になると太陽の力を解放し攻撃値1.2倍

月光:月が出ている場合自身の武器に月食効果を付与


(めっさ強そうなんですけどー。えー?ニケよりも強そうなんですけどー)


一方カリスはどこから出したのかわからない自身の二倍よりも大きい大剣を引きずりながら近づきつつあった


「遠慮はいいんですよね。それじゃあほんとに遠慮なくいきますよー!」


「はっ!」


気づけばカリスは目の前にいた。なによりもう剣を振り上げる体制に移っていた

本当に巨大な剣を持っているのかと思うほどの俊敏な動きにネロは何も話さずにただ


「《防御リフレクト》!」


「おぉー!さすがはネロさん、防御魔法も使えるんですね!」


(それでも後ろへだいぶ吹き飛んだぞ?防御魔法にも多少の衝撃吸収性はある。それでもこれだけ飛ぶってことは...ハハ、ワクワクさせてくれるじゃねぇかカリス!いいぜ、お前の攻撃を完全に受け止めて見せる)


その一撃はオタクとしての千冬の魂に火を灯した

華奢な女の子が巨大な大剣を軽々と振り回すこの光景

転生してから失っていたワクワク感を呼び起こし喪失感を焼き払う

そうすることでネロは先程以上の潜在能力を発揮する


「もう一回行きます!」


「おう!どんとこい!」


もう一度カリスが大剣を振り下ろしネロを狙う

それに反応しこんどのネロは先ほどとは違い攻撃の構えを取った


「はぁぁぁぁぁ!!」


「ここだ!《フォールロック》!」


振り下ろし攻撃に、岩を飛ばすような重い振り払い攻撃が命中する

もちろん力だけで見ればネロのほうが圧倒的に上なので今度はカリスが吹き飛んだ

だがカリスも負けてはいなかった


「へへ、やっぱりネロさんの攻撃は強いですね(^^)」


(ガチぃ?今結構強めに剣振ったんだけどなぁ。しかも地面に転がりながら無傷で土一つついてねぇ)


「私も負けていられません!もっと全力で行きます!」


「私も興に乗ってきたところだ。私ももっと上げていくぞ」


残像が見えるほどの速さで二人は再びぶつかり合う

カリスが攻撃すればネロはそれを弾いてカリスを吹き飛ばす

ネロが攻撃すればカリスがそれを押し返してネロを吹き飛ばす

その繰り返しで地面は気づけば土から岩盤に変わっておりところどころ湧き水も滲み出ていた

一方小屋の中


「寒くない?ここ草原だよね?」


「私は微弱な炎魔法を体に当ててるから平気...」


「シータずるいぞ!私も入れろ!」


「まぁレリア落ち着いてって。それはそれとしてちょっと失礼」


「やめて....ふたりとも私の布団に入ってこないで」


いや仲良しかよ

会って数日の仲とは到底思えんくらい仲いいじゃねぇか

そして小屋の外へ戻り


「おらぁぁ!」


「はぁぁぁ!」


二人はお互いにアツアツに盛り上がっていた

ネロは初めて自身が結構力を出しても大丈夫な人物を見つけたこと

カリスは自身を鍛えるために支障となる人物が全力を出していると思っていること

お互いの思いがぶつかり合い気づけば日は暮れ夜空が浮かんでいた


(こいつ大剣を使ってるとは思えない速度で攻撃を仕掛けてくるし、何よりずっとそれを続けてるのに疲れが見えない。本当にニケよりバケモンじゃねぇか!)


「そーーれっ!」


「《反射リフレクション》!」


「これも防げるんですね!すごいな〜、ものすごく強い人憧れます!」


「おぉ、そうか。じゃあこれよりも強くなれるよう頑張らないとな」


「はい!では...」


途中で言葉を止めてまたもや目の前からカリスが姿を眩ました

音もなくただただ静寂の中に溶け込むように


(今度はどこだ?上か、右か、左か、後ろなのか?魔力は感じない。音も特にしない。これは勘の勝負なのか)


風が体をかすめ夜特有の冷たさが肌を伝う

ネロはただただカリスの気配を探りつつ警戒するのみ

その瞬間


「これで終わりです!」


「後ろか!」


「《ホープワールド.....」


「させるか!」


後ろに現れたカリスに向かってネロは腹に全力でパンチを当てた

これはネロが意識してやったものではない。ネロの潜在意識が危険を察知してやった防衛本能である

もちろん攻撃中のカリスに防御する手段はなく何もクッションとせずに正面から受けかつてないほど吹っ飛び地面に倒れた


「や.....」


(やっちまったぁぁぁぁぁ!殺す気でとは言われてたけど本当にやる気はなかったんです!神よ、お許しを!私は無罪です。なので見逃してください)


多分フィーネ様は何も思ってないよ、だってなにか見込みがあっての転生だろうしそういうの気にしてないよ


「いやー痛った〜...さすがネロさんはすごいですね、私のあれも対策できるなんて」


(硬ーーー、硬すぎない?私結構本気で殴ったんですけどぉぉ、いつもと違って力の制御もせずに殴ったんですけどねぇ。まさかいたがるだけで無傷とは)


「それでそれで!私は何を鍛えたらいいですか?」


「うーんそうだな.....」


(正直鍛える所ある?結構完成形だろ。まぁ何も鍛えなくていいとか言っても正確的に何かをやらせろと言ってきそうだから適当に)


「お前は攻撃するときの後隙をなくすためにひたすら森のモンスターを狩り続けるといいだろう」


「わかりました!明日からよろしくお願いします!」


「よし、それじゃあ今日はもう寝ろ。明日も早いし、何より疲れただろう。飯をしっかりと食ってから寝るんだぞ、いいな」


「了解です!三人にも言っておきます!」


「ああ、それじゃあおやすみ」


カリスが小屋に入って行くのを見送ってからネロは森の奥の洞窟へ入り、フードを外してヘラへと戻った


「暑すぎるでしょこの服装、黒いから余計に日光吸収するし暑くてたまらん。汗ダラダラですよ」


だから通気性のいい素材に変えたらいいじゃないですか


「ここまで来ると愛着が湧いてきてるから嫌だね。暑いけど」


はぁ...まったく困ったもんですねこの人は


「それにしてもあれだけ強いシータとレリアとカリスがいながら村を壊滅状態にしたやつって誰だ?そしてタルスのお父さんが救ったってことはパワー関係はこうなるわけだ」


カリス達<村を壊滅状態にしたやつ<タルスパパ


「となるとタルスのお父さん相当強いな。カリスたちがあのレベルならお父さん私より強いかもしれんぞ?こんどタルスに頼んで会わせてもらお」


ヘラはその後ゆっくりと眠りについた。バチバチと焚き火の燃える音が響く洞窟で

ギルド対抗戦までに三人をどれだけ鍛えることができるのであろうか

だが正直もう鍛えなくてもいいと思うのは私だけか?

______________________________________

ちなみにこの世界の時間の数え方は

ルア:一日の数え方

エラ:一週間の数え方

エサリア:一ヶ月の数え方

トリーネ:一年の数え方

という感じです

みんなも覚えてね

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