第4話



しかしそんな男の子の言葉を抑えるように、再び魔女が続けた。


「まぁまぁまぁ、ちょっと聴きなさい。このえんぴつは一見普通のえんぴつだけど、さっきの消しゴムと同様に“特別な仕組み”があってね」

「特別な仕組み…?」

「ああ。“一度書いたものを一生忘れないえんぴつ”なんだよ」

「!!」


魔女はそう言うと、「せっかくだから今日の塾で試してみないかい?」と不敵に笑った。

そんな魔女の言葉に、男の子が半信半疑の様子で言う。


「い、一生って…でも、見た目は普通のえんぴつだけど」

「もちろん、見た目が普通のえんぴつだから、アンタが特殊なえんぴつを使ってるって誰も疑わないのさ」

「あ。なるほど…」


そんな魔女の言葉に、少し納得した様子の男の子。

そんな男の子に、魔女が更に話を続ける。


「まず、宿題や勉強する時はこのえんぴつで勉強する。覚えたい言葉なんかは特にこのえんぴつで勉強すると良い。どんなに勉強が出来ない人でも、物覚えが悪くても必ずこのえんぴつで書いたものは全て頭の中に入っていく」

「…ほんとうかなぁ」


魔女の言葉に、男の子はそう言いつつ首を傾げるが…。

そんな男の子に、魔女が更に続けた。


「本当だとも。それに、勉強中はこのえんぴつを使えばいいけど、テストでは別に他のえんぴつでもなんでも構わないんだよ。そのえんぴつは何かを“覚えたい時”に使うものだからね」

「…あ、つまりテストは“何かを覚えたい時”にすることじゃないから、このえんぴつは必要ないんだね」


男の子がそう言うと、魔女は「そういうことさ」とニヤリと笑った。


「でも、そんな凄いえんぴつ…何か高そう」


しかし、そんな男の子の言葉に魔女が言う。


「まさか。この店は全部リーズナブルな価格で揃えてるからさっきの消しゴムと同じ値段だよ」

「え、てことは50円!?」


魔女の言葉に、男の子が驚くのを見ると、その直後に魔女が更に驚くべきことを言い放った。


「でも、今日は特別に───…アンタにそれ、あげるよ」


魔女がそう言うと、一方の男の子が驚いたように目を丸くして言う。


「え!?いいの!?」


そんな男の子に、魔女が「いいよ」と頷いて言った。


「その代わり、使った感想とか聞かせておくれ。それ、ウチの新商品だからね」

「えんぴつが新商品…?ま、いいや。わかった、また来るよ!」


男の子はそう言うと、早速塾へ向かうべく店を後にした。




……その後の店内で。






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