第一章 異常発生編

第1話 いつも通り

目が覚めた。いつもと変わらない朝だ。

いつも通り歯を磨き、いつも通り朝食を食べ、いつも通り学校へ行く――はずだった。


「……めんどくせぇな、学校」


その一言で、今日は休むことに決めた。たまには違う一日があってもいいだろう。

両親は仕事で家にいない。俺は早速、ゲームを起動した。


「んーと、A〇EXでもするか」


三人一組で戦うバトルロワイアルゲーム。19部隊を蹴散らし、最後まで生き残ったチームが勝利する。

俺はコントローラーを握りしめた。


「さ、中二の実力ってやつを見せてやりますかぁ!」


……結果、即死だった。しかも真っ先に。


「ふざけんなよ!今のは味方が戦犯だろ!クソがあああああ!!!」


もちろん本当の戦犯は俺だ。だが俺は、すぐ他人のせいにするクズである。


「萎えたわー。無能な味方のせいで萎えたわー」


無能なのは俺だと早く気付いてくれ。


時刻は午前十一時。ゲームをやめ、昼寝をすることにした。

ヘッドフォンを耳にあて、推しのVtuberのASMRを流す。これが俺の密かな楽しみだ。

そして不思議なほどに、すぐに眠りへと落ちた。


「zzz……まってぇ……置いてかないでぇ……」


どんな夢を見ていたのか。どうせ推しと追いかけっこでもしていたのだろう。…まあ我ながらいい趣味だと思うよ。うん。


――そのときだった。


「きゃああああああああああ!!!」


悲鳴。女の声。俺は飛び起きた。心臓が跳ねる。

窓の外からだ。まさか誰かが襲われているのか?いや、まさか。さすがにそれはないだろう。そう信じたい。


震える手でカーテンを開ける。

そこには、血を流して倒れている女性がいた。


「……!」


考えるより先に体が動いた。救急箱をつかみ、玄関を飛び出す。

処置の仕方も知らないくせに。


「大丈夫ですか!?」


返事はない。呼吸もしていない。

傷口を見て、息をのむ。噛み跡だ。人間の歯形のように見えた。


「まずい……心臓マッサージ!」


必死で胸を押す。強く、一定のリズムで。

だが女性は目を開けない。出血も止まらない。


「どうすれば……」


そのとき、彼女の体がびくりと震えた。


「! 大丈夫ですか!?」


女性はゆっくりと起き上がった。不自然なほどに、ぎこちなく。

焦点の合わない目で、こちらを見つめてくる。

背筋に冷たいものが走った。嫌な予感が、確信に変わっていく。


「だ、大丈――」


「グギャアアアアアアアアアア!!!!!」


凄まじい咆哮とともに、女は俺へ飛びかかってきた。

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