アニマルパークでしょくざいを
ヨシモトミネ
読者からの手紙
前略
はじめまして。遠藤祥太朗と申します。
姉の
先生の書籍を拝読しました。誰にとっても身近な職場という場所において奇想天外な怪異が起こるというストーリー、同僚や知人が突然狂っていく描写はゾッとするもので、たいへん恐怖を感じる作品でした。今後の作品も楽しみにしています。
そんな作品を世に出された先生に、ぜひ聞いていただきたい話があるのです。
私は昨年の春から、■■県にある動物園に勤めています。歴史の長い、それなりに有名な園ですので、もしかしたら名前くらいはご存じかもしれません。
幼い頃から動物が好きだった私は、長年の夢であった飼育員として初めての就職を果たし、尊敬できる上司、先輩方の下で充実した日々を過ごしていました。
――のですが。昨年の夏、私はその動物園で、奇妙な仕事に参加させられました。とてもまともな業務ではありませんでした。
あれは、儀式です。その単語がぴったりな奇妙な場に、夜通し参加しました。
園長に聞いても、儀式の詳しい由来はわかりませんでした。曰く、昔から行われている伝統行事、とだけ。
伝統行事。笑わせます。七夕や節分なんかとはわけが違います。それくらい、気味悪いやり方でした。
それにネットで調べても、似たような行事はヒットしません。ましてや、民営とはいえ動物園というレジャー施設で行うようなことではありません。
しかも、このことは決して他言しないようにと言い含められました。何か後ろめたいことがなければ、そんな事は言いませんよね?
気味悪く思った私は、業務の合間にそれとなく儀式のことを調べてみました。そうしたら、妙なものがたくさん出てきたんです。
怖いんです。
ひょっとしたら私の職場は、妙なカルトに傾倒していて、気づかないうちに私も公序良俗に反する行いに加担させられているのではないかと。
あの儀式以来、変な音、いえ、声が聞こえるようになったんです。何が言いたいのかは、はっきりわかりません。けれども何か言いたげに、私の耳元で囁くのです。
この声は一体何を伝えようとしているのでしょうか。とにかく、それが怖い。
けれど、誰に相談すればいいのか、私にはわかりませんでした。
儀式の内容は幸いにも――というべきでしょうか、法に触れることではなく、であれば警察なんかの公権力は頼れません。
悩んで悩んで……そんなとき、姉から先生のことを聞きました。ホラー小説を書かれている先生なら、何か知見をお持ちではないか、そう思ったのです。
大変図々しいお願いだとはわかっています。ですが私にとっては初めて見えた光明なのです。
儀式の内容を簡単にまとめたメモを同封します。
どうか一度、話を聞いてもらえないでしょうか。
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