元愛犬のピピと癒しの一年間〜飼っていた愛犬が瞬きしたらポンコツ可愛い美少女になっていた〜

夏草枯々ナツクサカルル

トラック1『瞬きしたらピピの姿が大変身。ブラッシングとマッサージの音』

SE:自分の膝の上で愛犬のピピの毛を櫛で梳く音


(気の抜けた調子で独り言のように)

「んーご主人のブラッシングはやっぱりいつでも気持ちいー……」


SE:フェードアウト


(全体的に無邪気で楽しげに)

「……って、あれ? あれあれっ?」


「ごっご主人。ピピの体がおっきく、あっ! それに手が! 見て下さい! ご主人と同じになってます!」


「え!? うそっ、声も違う! あー、あー」


「なんでー? すごーい。変な感じー」


「え? 顔も体もほとんど人と同じになってるんですか!?」


「やったー! 一緒だ、一緒ー!」


SE:抱きつく音


「あれ? ご主人? どうしてそんなに困った顔をしてるのですか?」


「ほとんど人間なのに、少し元のゴールデンレトリバー要素が残っているから?」


「うん? はっ! 本当だ! 尻尾がそのまま。それにこれ……」


SE:柔らかな毛を撫でる音


「ピピのお耳も元のまま、ですね。なんでだろ?」


「え? 一旦お洋服を? はーい」


「あっでも前に着てたお洋服は今のピピだとちょっと小さいですよね」


SE:近くの服を取る音


「今はこれしかないから? ご主人の服を着ていいんですか! やったー!」


「うわー! クンクン、ご主人の匂いだー!」


「でも」


(鼻を鳴らす感じで)

「スンスン」


「なんか変ですね? もうちょっとわたしってお鼻が良かった気がするのですけど……」


SE:立ち上がる音


(声も少し遠ざかる。不安そう、テンパるように)

「あれ? え? ごっご主人? どこかに行っちゃうんですか? 嫌です嫌です! お留守番は! 行くならピピも一緒に!」


「……それはダメ?」


「じゃっ、じゃあっ! ご主人どこにも行っちゃ嫌です! いかないでー! ピピ不安です!」


(声がまた近くなる。また明るい調子に戻る)

「あっやった! 戻ってきた」


「うん。ご主人も突然こんな事になってピピが心配? そうですよね! やったー!」


「そうだっ!」


「さっきまでご主人がしてくれてたブラッシング、今度はピピがご主人にしてあげます」


「ご主人のブラッシングっていつもすっごく気持ちよくて、でも、ずっとピピだけがしてもらっていました」


「せっかく大きくなれたんです。これからはピピがご主人にたっくさん恩返しをしたいです!」


「はいっ大丈夫です! 小さな頃からずっとしてもらってるんですからピピにもきっとできますよ!」


SE:ガサゴソと何かを取り出す音


「え? あれ? そのブラシじゃなくてこっち。このブラシよりちょっと小さめですね。でも、わかりましたー!」


SE:櫛で毛を梳く音


(先程より少し落ち着いた口調で)

「どうですか? ピピ、ブラッシング上手くできてますか?」


「……気持ちいい?」


(照れているように)

「えへへへへ、やったー」


「頭のてっぺんから襟足(えりあし)のほうにかけてスィーッとスィーッと撫でるようにしてー」


「あっご主人、後ろにちょこっとだけ寝癖がありますよ。ピピの尻尾みたいな寝癖です。まぁピピの尻尾はこんなに小さくないんですけど」


「ピピの毛よりご主人の毛って硬いですねー。なんだか触っている感じが全然違うので不思議です」


「あっでもすごいサラサラですよー」


「はいー。ピピの毛もサラサラのもふもふですよ。ご主人が毎日綺麗に丁寧にブラッシングしてくれたお陰です」


(驚いたように)

「え? 今度からはピピが自分一人でブラッシングをするんですか?」


「えっなんでっ、ご主人も好きでしたよね? ピピのブラッシングしてる時のお顔ニコニコでしたよね?」


「もっもう自分で出来るからって……嫌です嫌です! できません。ピピ、下手っぴなので。ねーご主人っ意地悪しないでくださいー」


(心配するように、不安そうに)

「……ご主人、どうしてさっきからそんなにずっとムスッとしてるんですか?」


「ブラッシングをこれから一人でしろって言ったり、もしかしてピピ、何か悪いことしちゃいましたか?」


「してない? ほんとですか?」


(元の落ち着いた口調に戻る)

「ピピとこれからの事を色々と考えていたんですね」


「うーん。そういう難しいことはピピにはよく分からないのでお任せします。ピピはただご主人に従うだけですから」


「ご主人と一緒にいられたらピピはなんでも大丈夫です!」


SE:フェードアウト


「はいっ! ブラッシングはこれで終わりです」


「あっ、まだです、まだです! ご主人、動かないでください」


「次はいつもブラッシングの後にしていたペタペタ体触るやつしますから」


「触診? って言うんですか?」


「ふーん」


「ピピの体調を知るために大切なこと? そうだったんですね。マッサージか何かかと思ってました。じゃあピピもしっかりとご主人にしていきます」


SE:ペタペタと手を触ったり、強く押したり


「ニギニギ。ニギニギ」


「こうやってご主人の手を触っていると改めて本当に自分の姿が変わってるんだなって感じます。手がご主人とおんなじなんです」


「何かこの姿に変わる予兆とか……ですか?」


「いえ、全く気づきませんでした」


「目を開けたら、あれ? みたいな感じで……」


「ご主人も瞬きをした一瞬の間に?」


「不思議ですねー」


SE:服を上から撫でる音『マッサージ』


「グィーッと、グィーッと」


「どうですか? もう少し強めに?」


「はい! 任せてください!」


「グッ、グッ、グッ!」


「どうですか? さっきよりもちょっと強めです!」


「ちょうど痛気持ちいい? 良かったです!」


「こっちの辺りはどうですか?」


「気持ちいい? 上手?」


「えへへへー」


(少し真面目なトーンで)

「……ねぇご主人、本当に明日から自分でブラッシングしないといけませんか? ピピご主人にしてもらうの好きだったんですけど……」


(驚きと喜びが入り混じった声で)

「え? ご主人がまたしてくれるんですか? 本当に! やったー!」


(少し嬉しそうな落ち着いた口調に戻る)

「また、ちゃんと記録をつけるためにも? んんんん? まぁよく分からないですけど。ご主人がブラッシングしてくれるならなんでも良いですよ!」


「え? はいっ! もちろんです。ピピとご主人はずっとずーっと一緒です!」

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