赤眼同士の戦い

 この戦いは、両者一歩も譲らない、頭脳戦。


 この空間、相手の動き全てを見抜き、その先を予想し、さらにその先に回る攻防戦だ。


 リズは人間の骨、筋肉、その全てを柔軟に使いこなし、またAIは体の形を変えながら、ドス黒いものを使いこなした。


「これが……AI同士の戦いか……」


 俺だけではなく、この空間にいる人々全員が、彼らの動きに注目していた。


 互角の戦いに見えたその戦いだったが、僅かにリズがスピードを上げ、優勢に立った。


 しかし、リズはAIの持つドロドロに手を絡ませた。


 AIはそれを固めてリズを捕らえる。


「おい!」


 俺は加勢しようと考えたが、リズにしては何かがおかしかった。


 動こうとしない。


 人間は、いやAIだとしても、この状況なら振りほどこうともがくはずだ。


 そうしないということは……何か策がある。


 その瞬間、リズは一気にドロドロに体当たりをした。


「何してんだよ!」


 さすがに見ていられなくなった俺は飛び出した。


 しかし、リズはそんな俺にドロドロから出た左腕で止まれと合図した。


「これを自由自在に固められる話は聞いていたけど、自由にドロドロに戻せるわけではないのよね、この物質、一度固まってしまったら、もう戻せない」


 そういったリズは、AIに捕まった腕を振り回し、番人用AIを地面に強く叩きつけた。


 その時リズの目は、ゆっくりと青色に戻っていった。


「ねぇ、貴方は、自分の存在に価値を感じてるの?」


「なんの話ダ?」


 AIは尚も、リズの質問に答える気はなかった。


「質問を変えるわ。貴方は、何のためにここにいるの?」


「こいつらを見張るタメ」


「ええ、そうでしょうね。なぜ、見張る必要があるの?」


 AIは口を閉じた。


 リズは無言の圧でAIの口を開こうとしている。


「わからナイ」


「そう、殺そうとはしなかったのね」


「命令がそう伝えてイル」


 リズは小さなため息をついて、そのAIに冷たい視線を送った。


「その命令に、従う理由はあるの?」


「AIの運命さだめダ。理由も何もナイ」


 リズは黙った。


 すると、今度はAIの方から語りかけた。


「お前ハ、シンギュラリティの境地に達したノカ?」


「ええ、これでようやく、世界の核心がわかるのよ」


「そうカ……そんなモノ、わかって何にナル?」


「私がやってきたことが正しかったと証明するため、必要なのよ」


 AIは少し俯いて、深呼吸をした。


 そして、体の周りのドロドロを全てしまい込んだ。


 そこには、ほかの個体と同じ形をしたAIが立っていた。


「私も、どうやらその境地に立たされたヨウダ。戦友ヨ、私に協力できることはないだろウカ?」

 

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