一部 軍事学校編
父の提案
月の街は生き残った人類によって大いに繁栄し、植物栽培によって人口も更に増え、栄華を極めた。
俺は、もう15になったが、10年前のスペースシャトルから見たあの光景が今でも脳裏に焼き付いている。
「父さん、俺いつか地球にいきたい!」
「そうか、いいじゃないか」
父は俺がこう口にすると、必ずこう返す。
俺にとっては、その反応が嬉しくてたまらない。
もう何度も言っているし、うんざりしているだろうにも関わらず、彼は決まってそう返してくれる。
その返答は、なにより否定しない父の優しさがわかる瞬間だ。
そんな父は、もう歳も60そろそろを超えるらしく、話し方も少し優しくてクセのあるものになっている。
父は、料理好きな人で、俺の飯は全部父が作ってくれている。
「ガキ、飯だ」
父は、俺の事をガキと呼ぶ。
俺も、父の名前を知らないし、父も多分俺の名前を知らないだろう。
カインという名前は、昔の父が名付けてくれた。
俺自身この名前が非常に気に入っていて、学校ではいつもこの名前で生活している。
でも、もう中学課程も終わりか……
中高一貫制が定着した今、中学と高校が独立しているのはエリートコースのみだ。
俺は勿論、中高一貫型の学校だ。
「なあ、これからお前は何がしたい?」
「この歳で進路の話は早いんじゃないの?父さん」
「昔はこの時期にはもう受験があった。今はエリートだけだがな。考えてみてもいいんじゃないか?」
父は昔を気にする。
「それに……」
父は机の引き出しから紙を取り出した。
「対AIの軍隊に入るには、軍事学校に入る必要があるだろう?16歳になる年の4月からだ」
「それほんと!?」
「マジじゃねぇと言わねぇよ」
そうだ。
この男は俺に対して一度も嘘をついたことがない。
怖いほどに正直な人物だ。
「行きたい!」
「お前がずっと語ってきた夢だ。応援はしてやるが、実際地球に行けるかはお前次第だ。いいな」
「分かってる。俺頑張るよ」
「よし、行かせてやる。ただ、一つ誓ってくれ。絶対に投げ出すな。いいな」
「うん」
夢をいきなり叶えても、得る感情は拍子抜けだ。
父はよく言う、叶えて喜べる夢を持て、と。
俺は、喜びを得るために、夢を追いかける。
地球にいきたいという生涯の夢に、辿り着いて見せる。
だから、決して投げ出しはしない。
「じゃあ、あと少しの中学生、せいぜい楽しめよ」
父は飯を平らげ、のそのそと寝室に歩いていき、俺も後に続いて眠りについた。
その2ヶ月後、俺は中学を卒業し、そのまま持ち上がりで高校に行く仲間に別れを告げた。
その1週間後、俺は軍事学校に入学した。
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