Death人狼③ 第三話

 朝、起きて食堂に集まる。

「皆さま、本当にとても残念で悲しいお知らせがあります。人狼の襲撃により、富田累さんが消えました」

悟は内心、焦っていた。相方はまだ子供だし、狂人が誰かさえ分かっていない。このままでは完全に殺られてしまう。

「あ、あの……ライさんは一応占い師候補ですよね? 誰か占ったんですか……?」

「え、えっとね、あのびゃくやって人は白だよ!」

「な、なるほどです!」

「つまりライが真だとすればライと百夜は確白。残ってるのは俺とモモ。どっちかが人狼ってことだな……」

「で、でもCO被りですから……」

「そうなんだよなあ……」

悟はガリガリと頭を掻いた。

(ライが人狼だとバレたらマズい。何とかカバーしないと! モモと百夜のどっちが狂人なんだ⁉ まさか、狂人は死んでる⁉ いや、そんなはずはっ――)

「とりあえずライさんは吊らないとマズいですよね……」

悟はさらに焦ってきた。あれこれ考え抜いた末の最悪の選択を悟は手に取る。

「……確かにライは吊った方がいいと思う」

そう、身内切り――。モモはコクコク、と頷いた。ライは絶望した顔で佇んでいる。

「投票の時間です」

みんなそれぞれ入れていくが、結果は決まり切っていた。

「開票します。今回追放されるのは……木山ライさんです」

ライはその瞬間、叫びだした。

「や、やだ、やだ! ママ、パパ、たすけて!」

GMはニコッと笑って言った。

「それでは素敵な旅へ行ってらっしゃい――」

ライはガクリ、と膝をついた。ビクビクッと痙攣しながら泡を吹いて死亡した。

ライの部屋の扉には×印。


 最後の夜だ。悟には結局、どちらが狂人なのか分からない。

(百夜が村人だったらもっと露骨に俺を吊ろうとするはず。けれど……ああ、どうすればこのゲームを終わらせられるんだ⁉)

結局悩み、悩んで誰も襲えなかった。


 「あ、お、おはようございます……」

「……ああ。おはよう」

悟はモモをじっと見る。モモは怪訝そうな顔をした。

「なあ、百夜。お前の意見を聞かせてくれないか」

「……はあ? そんなもん、敵に情報渡すようなもんだろ。あっち行け」

(はあ……確かに百夜の言う通りだ)

「それでは会議の時間です」


 「それぞれの意見を聞かせてほしい」

「さっきも言っただろ。こういうのはおしゃべりから死ぬ」

「そうかもしれないけどさ、生き残るにはみんなで協力しないと」

「そんなもん必要ねえよ。俺は誰に入れるか決めてるからな」

「おい、独断で決めるなよ!」

「独断じゃない。俺の考えからそうなった」

百夜と悟はバチバチと睨み合う。

「はあ……そろそろ言ってもいいか」

百夜キッとモモを睨みつけた。

「CO狂人。俺たちの勝ちだ」

悟は驚いて百夜を見る。

「人狼もCOしろよ」

「……CO人狼」

「ハッ。やっぱりな」

モモは俯いて涙を溢す。もう、ダメだ。村人サイドに勝ち目はない。方法はただ一つ。諦めることだけ。

「わ、私の負け、ですね……」

そう言ってモモは大きな鉄筋コンクリートに頭をつぶされた。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

◎内訳

山上悟  …人狼

木山ライ …人狼(死亡)

百夜   …狂人

桃宮望  …村人(死亡)

城ケ崎モモ…村人(死亡)

鈴木豪  …村人(死亡)

富田累  …村人(死亡)

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 今回も願いは保留になった。

「杏奈を生き返らしたかったけど無理だもんなあ」

悟はため息をついて、元々、杏奈のものだったはずの連絡先を削除した。

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