どうすれば、このまま空を飛べるかと考えていたら、異世界に変わっていた。
志村けんじ
第1話 目が覚めたら異世界
ある日の放課後帰り道……。
オレは河原の土手の草の絨毯に一人寝転んで、青く広がる空とゆっくりと流れる白い雲を眺めてたんだ。
「あぁー、このまま身体が宙に浮いて、空って飛べねーもんかなぁー」
そんなことを考えてた。
まぁ、そんなことはありえないよなー。でも、ホント身体だけで自由に空って飛べねーもんかなぁー。
そんなバカなことを考えてたんだ……。
そのうちに、急激な眠気に襲われて……。
そこから何時間眠ってしまったんだろ……。
「!?」
目を覚ますと、目の前の景色が突然変わってた!?
あったはずのビルの山がない!? 広がる緑の草原……。なんだか前に見た映画の中の、まるで北欧の国の景色みたいだ。
「!?」
それになんだよ!? オレが着ている服が変わってる!? 高校の制服じゃない。
これって、まるで着物……。サムライの格好だ。
刀までちゃんと差してる。長いのと短いのと、ちゃんと二本だ。
それになに!? この横にあるのって!? これって、火縄銃……。
「アンタ、こんな所で何しとる?」
全然聞いたこともない言葉で、口髭を蓄えた老人が声を掛けてくる。
この人、なにを言ってる……。言葉わかんねー。でも、少なくとも英語じゃーないみたいだ。
「あっ、えっ、えーっと……」
と、老人の後ろに人影!? 違う! 熊!? 違う! 熊でも人でもない!? なんだよ!?
鎧着てる、化け物!? なのか!
「危ない!」
そう思った瞬間、老人を付き飛ばして、化け物の剣から老人を助けてた。
長い方の刀抜いて構える。
怖い……。刀の先がカタカタと震える。
魔物が剣を振り下ろして斬りかかってきた。
瞬間、オレは刀を横に振るった。
魔物の刀と鎧ごと、魔物の身体が、まるでバターを切るような感触で、真っ二つに分かれた。
「はぁー、はぁー、はぁー……なんだこれ!? この刀ぁー」
オレがやったの? 勝手に刀が動いたような…。
なんか実感ない…。足が地についてないような感じがする。
でも良かったー。このお爺さんが無事で。
「お爺さん、大丈夫?」
「あ…ありがとう。助かりました」
あれ? 言葉がわかる。なんで? 夢? 魔法?
「刀……」
あれ? 鞘に戻ってる。
もう一度鞘から刀を抜いてみる。
あれ? 血、一滴も付いてない。
魔物が消えてる……。なんで?
試しに、近くの太い木に刀を振ってみる。
切れない。傷一つ付いてない。なんで?
って、考えたってわかんねーか。
あぁー、これが夢ならすぐにでも冷めてほしいし、これが現実なら……。
取りあえず、このお爺さんに付いていってみるしかないんだろうな。
♢
このお爺さんに付いていってわかったことは、ここが「ムートリア王国」という国で、その中の「アスラン」という村だということだ。
さっきの鎧を着た魔物は、グラウド(Groud)という魔物で、熊のような巨体の岩のような硬さの体を持つ、普通の剣では斬れない魔物らしい。
この村の人たちが、オレとお爺さんの周りを取り囲み、騒いでいる。
村人たちの注目はオレではなく、オレが持ってる「刀」の方だ。
村人たちが、オレの持ってる刀を触りたがる。
長椅子の上に置いていた刀を、村人の一人が持って鞘から抜いてみようとするが、全く抜ける気配がない。長い方、短い方の両方だ。
何人かが刀を鞘から抜こうとやってみたが、刀を抜ける者はいなかった。
お爺さんがそんな村人たちに、自分の恩人に失礼だとたしなめてくれる。
お爺さんの名前は「ムラン」といい、この村の長老の弟らしい。
この村は何度も魔物たちに狙われていて、魔物たちの侵入をギリギリの状態で防いでいたそうだ。
村の家の集落の周りを、丸太の壁で取り囲む。よく映画やマンガで見ている村の姿だ。
取りあえず飯も食べさせてもらったし、ベッドも用意してくれたので、今日はもう眠るよ……。
なんだか凄く疲れた……。
朝起きたら、いつもの世界に戻ってますように……。
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