掌編・140字小説・散文 置き場 【公募外】
慈彷 迷獪
掌編1. 『夏花。一瞬の輝き』
いつからだろう? 他人は私に興味ないってわかったこと。じゃあ、別にいいのか! と、凝り固まった「こうでなきゃ」が削がれた瞬間を「ああだったか?」、「いや、こうであったか?」と考え耽る。
それでも、正直、羨ましかった。可愛く着飾った浴衣姿の女の子たちのグループ。彼女に
やっと、ひとりは恥ずかしくなんかない。私は自由なんだって、思っていたのに……。
私の心の奥には、本当は誰かと夏の夜の楽しさを共有したがっていたのだという事実が潜んでいたようだ。惨めさと恥ずかしさが沸いてくる。
そんな気持ちを誤魔化すかのように、500ml缶のレモンサワーを煽った。
酒を呑んで、ぼんやりとしていたからこそ、気付けたのかもしれない。
仕事帰りのサラリーマンがひとり、自分のためだけに花火の打ち上げを今か今かと待っているではないか!
さらに後ろでは、後から合流してきたお爺ちゃんに孫娘が説明をしている。
「さっきね〜! お友達になったの!」
お爺ちゃんは驚きつつも、右から左へと飛んでくる子供たちの言葉をこまめに拾っては、まとめ上げている。なんとも、素晴らしい。さながらその様は、一流芸人。
そして、同じ麦わら帽子を被って座る老夫婦が少し離れた場所に腰掛けている姿が見えた。なんとも温かい光景ではないか!
極め付けには、辺りを巡回してくださっている警察官。赤く灯る光で人々を案内している。
まだ空は明るい。それでも確実に、時間は夜へと進む。
今日の夏の夜の空気は、程よく涼しくて、風が吹く。
人々は、レジャーシートを抑えているけれども、私には関係ない。芝生に直で座り込むという豪快なスタイルを採用しているからだ。肩肘張らないスタイルが、しっくりときた。
青から茜色へ、そして薄暗い夜の時間へと移ろいゆく。
始まり間近ということもあり、友達と合流のために通話をして話し込んでいる子もいた。
なんか、この光景が好きだ。無事、合流できるといいね、と、心の中で
にこやかに願う。
ここに集うみんなが、徐々に暗さを増す光景の中で、同じ景色を待ち望んでいる。
何故だがとても、温かい気分になった。
「見て! 夜が来たよ」
先ほどのコミュニケーション能力に長けた孫娘の子供が叫ぶ。
始まる。夜が来たのだ!
歓声と同時に、ヒューっと打ち上がり、空へと花開く輝き。
顔は、いつの間にか自然に綻び、声は上擦っていた。
ただの炎色反応に、私たちはこんなにも心奪われる。
今年の夏景色を、忘れたくない。まだ、ずっと、覚えていたい。
遠い空が近くに感じ、落ちていく火花がなんとも流れ星のように散りゆく様に、釘付けだった。
「人が作り出す圧倒的な自然美が、この先もずっと続きますように」
そんなことを、つい祈ってしまった。空との近さを感じる花火を、来年もさらにそのまた先も、轟音と共に、耳で、目で、心で愛でたい。
孤独が醒めきってしまうほどの衝撃に、轟音に、夏だけのお祭り騒ぎに、今この瞬間を感じて、夜は更けていった。
〈了〉
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