第4話

ヴェル 「何むすっとしてるの? 酔った?」

ゼアロ 「酔わないよ。ウーロン茶なんだから」

サクヤ 『彼……ゼアロは下戸らしい。たずさえている金の鎌で魂を狩るのが

   ライフワークのようだが、僕には魂がないから、さっきはがっかりさせてし

   まった』

サクヤ 「ゼアロ? これで機嫌なおしてくれないか」

               トン(グラスを置く音) 

サクヤ 『彼の名から連想した、アルコールの入っていないカクテル。青い瞳の彼の

    ようにクールな、シャンパン・ブルース・ゼアロ』

ゼアロ 「ありがとう」

サクヤ 『グラスを傾ける彼の指には、ドクロの指輪が輝いている……本物の骨

    だったりして』

ヴェル 「ふふふ、このお酒おいしい」

サクヤ 『白い頬を赤く染めて、ヴェルが飲んでいるのは、新鮮な血のように赤い

    ワインだ。 二杯目だけど、もうけっこう回ってきているらしい。

    警戒心もなくなってきてるのかな。せっかくだからいろいろ訊いてみよう』

サクヤ 「二人は、どういう関係なの?」

サクヤ 『種族も違うし、血のつながりもなさそうなのに、肩が触れ合うような距離感が気になった』

ヴェル 「うーん。夜のパートナー(語尾あげ、疑問形)」

ゼアロ 「へんな言い方しないで。ただの友だちでしょ」

ヴェル 「ふふ、つめたーい。ゼアロはね、最初天使だったんだけど、天界で死神の

    鎌にひとめぼれしちゃって。それを奪って逃走中に、俺と出会ったの。

   夜の街を旅しながら、俺が血を吸った後の人間から魂抜いてるんだ」

サクヤ 『だから、抜け殻となった人間は、吸血鬼にはならずに、そのまま朽ち果

    てる』

サクヤ 「吸血鬼って、本来は、血を吸うことで相手を仲間にするんだろう? 仲間

    が欲しいとは思わないの?」

ヴェル 「うん。だって、永遠に生きるって、けっこーつらいから」

サクヤ 「……死にたい?」

ヴェル 「ううん。俺は、生きるよ。思い出のために」

サクヤ 「そうか。僕といっしょだね」

(少し置く) 

ヴェル 「ねぇ、この上って、どうなってるの? 外から見たときは、屋敷の一階が

    Barだなんて珍しいなと思ったんだけど」

サクヤ 「あぁ。ここね、だれも住んでなかったから。改装させてもらった。上の部

    屋にある家具なんかはそのままで。前の持ち主は、公爵だったようだけど、

   革命のときに市民に襲撃されて、血が途絶えたらしいな。もう何十年も無人

   の亡霊屋敷さ」

ゼアロ 「そんなところに住むの、縁起悪いよね」

ヴェル 「楽しそうじゃない、コレが出そうで」

サクヤ 『ヴェルの言うコレ、実はいるんだけど、まだないしょにしておこう』

ヴェル 「ねぇ、サクヤ」

サクヤ 「ん?」

ヴェル 「ここ、一人で住んでるんでしょう? さびしくなぁい?」

サクヤ 「何が、いいたいのかな」

ヴェル 「ふふ、空いてる部屋があるなら、ここにすませてほしいの。もう、森の中

   に棺桶隠しとくの疲れちゃったから(ぁ)」

サクヤ 『そうか。吸血鬼の彼は、陽のあるうちは寝ている。その間にうっかり、

    バンパイアハンターにでも見つかったらたいへんだということなのだろう

    う。僕は眠らなくても平気だから、「疲れる」感じがとうに分からなくなっ

     ている』

ゼアロ 「危なくないように、見張っててあげてるじゃない。俺は寝なくて大丈夫だ

    し」

ヴェル 「だって、寝込みおそわれそうなんだもん」

サクヤ 『こいつに、とヴェルは、真っ黒に塗った長い爪が生えた指で隣をさす』

ゼアロ 「誰がするかそんなこと。……興味ないよ」


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