大きな木と宝探し。風の電車にのって、風の街にいく。大好きな音楽を聞きながら。大好きな君に会うために。

雨世界

第1話 あの、宝物ってなんだと思いますか?

 大きな木と宝探し。風の電車にのって、風の街にいく。大好きな音楽を聞きながら。大好きな君に会うために。


 大きな木と宝探し


 登場人物


 森村宝 十五歳 女の子 よく高いところから落ちる。あんまり笑わない。旅人。


 青根葉 十五歳 男の子 まっすぐですごく優しい。いつも笑顔。女の子みたい。風の街の住人。


 きみと一緒に地図を見る。

 それから二人で、冒険に出かける。

 ……まだ見たこともない場所に。

 わたしときみの二人の心の中にしかない場所に。


 風の電車


 あの、宝物ってなんだと思いますか?


 きっかけはなんだったんだろう? そんなことを真っ白な風の電車の中で十五歳の旅人の女の子、森村宝は思い出していた。私が同い年の男の子、青根葉ちゃんのこと大好きになった理由。それはなんだったんだろう? うーん。うまく思い出せない。気がついたら葉ちゃんは宝の中でとても大切な存在になっていた。本当にいつのまにかだ。なにか特別なできごとや劇的な変化があったわけでもない。でもいつのまにか宝は葉ちゃんのことが大好きになっていた。

 心臓がどきどきする。思ったよりも緊張する。どうしてだろう? 葉ちゃんと出会ってから、いろんな話して、たくさん遊んで、たくさんキスして、緊張したことなんて今まで一度もなかったのに。(自分でもすごく不思議だった)

 変だな? 宝は落ち着くために小さく深呼吸をした。(電車にのっているのは宝一人だったから、遠慮する必要はなかったのだけど、宝はなるべく目立たないように呼吸をした)宝は葉ちゃんのきらきらと輝いているまっすぐな黒色の瞳を思い出す。さらさらの黒髪と優しい声を思い出す。宝はよく窓の近くの席で日の差し込む光の中で、眠っている子猫みたいな葉ちゃんの寝顔をじっと見ていた。

 葉ちゃんは怒るけど、葉ちゃんはまるで女の子みたいな可愛らしい顔をした男の子だった。そんな怒った顔をした葉ちゃんのことを思い出して思わず宝はにっこりと笑った。


 宝は白色の大きめのパーカーを着ている。青色の長いスカートを履いていて、足元は白色のスニーカーだった。自慢の長くて美しい黒髪は頭の後ろで青色のリボンでまとめてポニーテールの髪型にしている。(動きやすいから)

 耳にはうさぎのしっぽのようなイヤリングをしている。音楽は聞かないからほかになにもつけていない。手首に時計もつけていない。

 宝は白色のスポーツバッグを持っている。荷物はそれだけで、その中に旅の荷物は全部詰め込んであった。

 窓の外の風景は変わらない。ずっと緑色をしている。永遠の緑色の大地と青色の空が広がっている風景が続いている。

 自分の生まれた街から出たことがなかった宝は、感動して、そんな自然の風景を見ていて飽きることは全然なかった。(いつもは見慣れた建物ばっかりの風景を見ていた)

 そろそろ目的地に着くかな? ほかに誰もいない緑色の電車の椅子の上でそわそわしながら宝は思った。

 電車がゆっくりと速度を落としていく。電車の窓の外には遠くに小さな駅が見えてきた。宝は椅子から立ち上がると、白色のスポーツバッグを持って、電車を降りる準備を始めた。

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