第10話 確執解消



 それから数時間後、乙川達は集合場所に戻って、オニキスと合流した。


 乙川はオニキスに自分の考えている事を伝える。


「話は聞いたよ。お前の父親がやった事は正しいと思うぜ。俺でもそうするだろ。法律や決まりなんかより、人の命の方がよっぽど大事だ。それが家族って言うならなおさらだ」

「しかし、他の人間達はそんな考えは認めないでしょう」

「だったら何だって言うんだよ。他の人間の考え方がそんなに大事か? それ気にしてて幸せになれるのか? 俺だって毎日女装してるけど、結構悪い言葉をぶつけられるぜ」


 だけど乙川は毎日が充実していて、この選択を後悔していないという。


「他人の考え通りに生きてやって、幸せになんてなれるのかよ? お前がやることは、そうじゃなくて親父さんの行動を誇りに思う事じゃないのか?」


 その言葉を聞いたオニキスは、牢屋に入っている父親に久しぶりに会いに行く事にした。


「長い間あっていませんし、最後に顔を会わせたときは喧嘩をしてしまいましたから。私がこんな事を言える立場ではないのですが」


 今までルールを守らせようとしてきた側の発言ではないだろうと、オニキスは弱弱しい声音で言う。


 乙川は、「何言ってんだよ」とオニキスに言った。


 寄り道にはなる。


 しかし、スピード重視の旅をしているとはいえ、それがオニキスにとって大事な事だと判断したからだ。


 だから乙川はオニキスの背中を叩いて「家族に会いに行くのに、ルールなんて関係ないだろ。さっさと行ってこい」と送り出した。


 ロメオやスケイスも反対しなかった。





 一時間後、刑務所から戻ってきたオニキスはすっきりとした顔になっていた。


「次から覗きをする時はもう少し静かにしないとバレますよ」と乙川達は覗き行為にくぎを刺されたりしたが、オニキスのそれは咎めるような声音ではなかった。


 乙川達はグリーンロックを出て、次の目的地へと向かう。


 オニキスはその日から少しだけ頭が柔らかくなったが、なぜか国の結婚に関する法律を変えようと悩む事になるのだった。


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