第3話 獣に変身していく人々

 そんなある日、奇々怪々な出来事が起きた。

 テレビの報道番組では、日本人の数百万人がカタツムリに変身してしまったと報じていた。カタツムリだけではなく、働きアリや蛇、狐や象に変身しているモノなど、さまざまな生き物に姿を変えていたのだ。


 番組に出演していた変身をしなかったあるSF作家の玉城と、科学者の元治博士は、テレビの報道番組に出演をし、このたびの出来事に対してのコメントを求められていた。


 テレビ局の女性アナウンサーが、深刻そうな顔をして、玉城に訊いていた。


 「いったいどうしたこのなのでしょう。カフカの小説、『変身』ではあるまいし、人間が一夜にして、別の生物にかわるなんてことがあるのでしょうか?」


 玉城は自慢の髭をなでながら、


 「人間の本性が具現化されたものではないかと思うのですよ。たとえばカタツムリになった人達が多いということは、日本が鎖国的でお家大事の国民性が、カタツムリに象徴されているということだと思いますね」


 玉城はそう自慢げに語ると、元治博士は、


 「そんなSF映画みたいなことがあるわけがない。確かに、精神的な思いは顔の表情を変えていくことはありますが、人間が一夜にしてほかの生物に変わるなんて、あまりに非科学的な話です」


 「ならば元治博士。なにが原因でこんなことになったのだと?」


 玉城はプライドを傷つけられ、腹を立てつつ元治博士に尋ねた。


 「そうですね。あくまで仮説ですが、宇宙からのなんらかの放射線が、人間のDNAを急激に変化させたのかもしれませんね」


 「いや、それはおかしい。宇宙からの放射線の影響であれ、どうみてもカタツムリや獣の姿という、ピンポイント的な変身をさせるとは思えない」


 そう発言し終えた玉城はカラスに変身をしてしまい、元治博士はナマケモノに変身してしまったのだった。


 変身した者たちは、姿こそ変化はしたが、言葉も話せるし、人間としての考えも食事もできたのだが、自分の姿をみてパニックをおこし、暴力をふるうなどして精神的に錯乱していた。そのため、社会は大混乱に陥り、経済活動はほぼストップしていた。


 しかし、少数とはいえ、変身しない者たちもいた。とくに子供達が多かった。また、いわゆる聖職者と尊敬される人達のなかにも、少数だが、変身しない者がいた。だが、以前よりも品のある顔立ちになっていることが多かった。その者たちは、変身しない者たちを教会やお寺に招き、避難生活をさせたり、食事の世話などをしていることが、私の能力でみていた。 

 

 私はどこかの異星人たちの実験だと、精神波をさぐり、月だとわかり、月へと向かった。



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