2本目「赤ちゃん人形+人形にまつわる小話」

私ね、人形が凄く苦手なんですね。

日本人形とフランス人形とか人の形をしたやつが苦手で

ピクサーの「トイ・ストーリー」を観てから苦手でもぞんざいに扱わなくなったんですが

それまでは見るのも嫌で、避けて通るぐらい嫌でした。

ただ、フィギュアは平気というか好きです。

なので、いくつかフィギュアは持ってます。(笑)

では、なぜ私がそうゆう人形が苦手になったのかお話します。


前話でお話したように、母が看護師で託児所に預けられたり、祖父母の家に預けられたりという生活を幼少の頃から送っていたわけなんですが

割合としては託児所はほとんど預けられることはなく、週末に父方の祖父母の家へ泊りにいったりしていて主に母方の祖父母の家で生活してたんですね。

その母方の祖父母の家というのが、母の妹(叔母)、祖父母と祖母の妹(大叔母)が

一緒に住んでいて、この大叔母が戦争の影響で精神が壊れてしまい、精神年齢が子供のまま大人になってしまったそうです。

祖父はTHE昭和の男で、手がでることなど日常茶飯事で祖母とも大叔母ともしょっちゅ喧嘩しては家の中には怒号が飛び交ったりなどしていました。

しかし、普段は優しい祖父なので私は祖父が大好きでした。

祖父母の家は一階に祖父母の部屋があり、二階は階段を上ってすぐのタンスやらなんやらがある部屋、大叔母の部屋、そして叔母の部屋がある。

叔母の部屋は普通のその当時のOLさんの部屋って感じでした。

大叔母の部屋が昔、曾祖母と大叔母が暮らしていた時の物が多い。

日本人形やビロード人形などがあるなかで、それはいつ購入したものなのか

不明(正確には聞いたことがない。)だが、大きめの赤ちゃん人形があった。

その赤ちゃん人形が私は小さい頃お気に入りだったのだが、ままごとで使うとかではなく、ぞんざいに扱って遊んでいたのだ。

簡単に言うとヒーローごっこの敵役で使っていた。

よく、大人たちからは「乱暴に扱うと化けて出てくるよ!」とか「夜に仕返しに来るぞ!」などと子供への脅しの常套句を言ってきがもちろん聞き入れるわけがなく、

私は敵役として人形を倒し続けた。

そんなある日、祖父と2人で留守番をしている時のこと

1本の電話が鳴り、なにやら少し出掛けなくてはならなくなったらしく

私は少しの間一人で留守番をすることになった。

今では考えられないことではあるが、未就学児が一人で留守番というのはよくあることであった。

私は一人になったので居間でテレビを観て祖父の帰りを待つことにした。

すると、二階から「おーい、おーい」と男性っぽい声が聞こえてきた。

私は外で誰か呼んでる声だと思い無視しテレビを観ていた。

するとまた「おーい、おーい」と呼ぶ声が聞こえた。

私はその声が祖父の声に聞こえたと思い、二階へと駆け出した。

というのも、祖父は私を呼び物陰に隠れ私を驚かすのが一種の遊びになっており、

私もそれに引っかからないように祖父を探し見つけるのが好きであった。

二階へ上がると、まずそろーりと奥の叔母の部屋まで行き、その奥にある部屋の

ドアをゆっくりと開けた。

その部屋には洗面台がありとトイレがあり、更にベランダへのドアもあった。

まず、ベランダを探すがいない。

トイレのドアを開けるがいない。

叔母の部屋戻り、部屋中探すがいない。

すると、私の後ろの方から「おーい、ちとー、おーい」と私を呼ぶ祖父の声が聞こえた。

家族の中で「ちと」と呼ぶのは祖父だけなので、私は完全に祖父だと確信した。

私は大叔母の部屋をスルーし、物置にしている部屋まで行き階段の方へと駆け出した。

階段まで行くと「おじいちゃーん!隠れてるのはわかってるよー!」と一階へ向け

大きな声で叫んだ。

しかし、返事が返ってこない。

私は何度か大きな声で呼びかけたが全く返事がない、私は段々と不安になってきた。

家に一人だし、祖父は返事を返してくれない。

私は不安から少し怖くなり一度一階へと降りた。

居間や仏間、トイレ、風呂場、更に一度裏庭へ出て物置小屋の中まで調べ、

一階部分をくまなく探したがやはりいない。

これだけ探していないとなると、もうそこには恐怖だけしか残らなかった。

一気に怖くなり、泣きそうになりながら私はずっと「おじちゃーん!出てきていいよー!」と叫び続け、恐怖も限界に近づき意を決して鍵を開けて外に出ようと思った。

私は玄関まで行き鍵を開けようとした時、二階から「おーい!ちとー!こっちだよー!」と私を呼ぶ祖父の声が聞こえた。

私は涙目になりながら、二階への階段を駆け上り、二階の部屋を走り抜けた。

一番奥の部屋まで来たがやはり誰もいない。

私は不安と恐怖も相まってパニックになり、泣きながら祖父を呼んだ。

すると、一番手前、物置にしている部屋から「おい、こっちにいるよ。」と

祖父の声が聞こえた。

私は物置の部屋へと行き階段を覗き込んだがやはり誰もいない。

ふと後ろから「おい!」と呼ぶ声が聞こえた。

私は恐る恐る後ろを向くと、そこには誰もおらず、目に入ったのは

私がよく遊ぶ赤ちゃん人形があった。

私は理解ができずにそこに立ち尽くしていると「おい!こっちだ!」

と祖父の声が人形から聞こえた気がした。

私は恐怖よりも気のせいでありたいという安心感がほしく、実はその人形がおいてある棚の陰に祖父が隠れているというのを信じたくて人形へ恐る恐る近づいた。

すると人形の方からぼそぼそと何かしゃべる声が聞こえた気がしたので耳を近づけると


「お前を殺す、殺してやる」

「殺してやる!殺してやる!殺してやる!」

今までに聞いたことのない低く籠った声で「お前を殺してやる!」

と人形から聞こえた瞬間

私は大声で泣き叫び一階への続く階段をほぼ転げ落ちる形で逃げていき

そのあとの記憶が曖昧だが、唯一覚えてるのはほどなくして祖父が帰宅し、

今までにない焦り交じりの怒った顔で何かを怒鳴りつけるように二階へ上がり

不審者がいないか部屋中探しまわっていたようだが正直、私はそこまでの記憶がもうない。

それから洋風の人形がトラウマとなり、洋風の人形が苦手です。

今となっては、あれが何だったのかはわからない。

祖父母の家は私が20代の頃、一度火事に全焼し、建て替えており

その人形が今でもあるかはわからないし、聞く気にもなりません。


因みに、人形と言っても様々な種類があり、私もそんなに詳しくはないのですが

今から10年程前でしょうか、私と妻と子供たちでよく近所にある

某リサイクルショップ(全国的にあり場所によって名前が違う)に行くのですが

フィギュアコーナーの一角に「ブライスドール」コーナーがあり

私は特に気に留めることなく、家族とフィギュアコーナーを見ていたのですが

妻と娘が当時、韓流アイドルにハマっておりそのグッズを見ている間、

私は暇を持て余し、店内を色々と見て回り最終的にはまたフィギュアコーナーに

戻ってきていた。

ある程度見回りながら時折、韓流コーナーを見ては妻と娘がまだグッズを漁っている姿を確認する。

すると何の気なしに、気づくと「ブライスドール」コーナーへと入り込んでいた。

ブライスドールの存在は知ってはいたが、あの独特の雰囲気が苦手で気に留めることがなかったのですが、ある一つのブライスドールが目に入り気づくとその子が気にって仕方がない。

今思い返しても、何故あんなに固執したのかわかりません。

それからというもの、仕事帰りに寄ってはその子を見ていたり

休日も何とか理由をつけては某リサイクルショップへ家族で出かけたり

みんなが行かないとしても、自分ひとりで出かけたりしていた。

妻へはその子を迎え入れたい旨も伝え、ショーケースやどこに配置するなど

念入りに計画を立てていた。

私はその一体のブライスドールに魅入られていた。

そんなある日、私は家族でエイサーを見に行くことになり

最初は乗り気ではなかったが、魔除けの効果もあると聞き、渋々一緒に出掛けた。

エイサーを観終わった後、なんだか肩が軽くなった気がした。

それ以降、不思議なことにあれだけ執着していたブライスドールのことなど忘れたかのように、私の中から消えていた。

一体何故、あそこまで執着したのか、どうしても手に入れようと必死だったのか

未だにわからないし、そもそも興味すらない何なら苦手意識もあった。

しかし、不思議とその時の感情というか感覚というか心情のようなものは憶えていて。

あそこまで愛おしく、絶対に自分のものにしたいという感情。

ただ、人形が可愛くて俗にいう一目惚れで購入したいとは違い。

その人形に恋をして、最終的には愛してしまっている感覚であった。

「この子を手に入れらるなら今の家族を捨てる」とまで当時は心に決めていた。

人形一体の為に、家庭を壊し、捨てようと本気で思うぐらい乱心していた。

何故、あんな人形に固執していたのか。

何故、あそこまで魅入られたのか。

今となっては知るすべもないです。

そんな不思議な出来事でした。


—あとがき―

人形の話であと、とある人気アニメのヒロインのフィギュアの話があるのですが

それはまた別の媒体か機会があればお話ししようと思ってるんですが、

その話に出てくる問題のフィギュアなんですが、同じフィギュアを私も持っていて

その話を聞いて以来、そのフィギュアは別のところへ移動させてあまり視界に入れないようにしています。(笑)




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