異世界転生しても災厄の人生でした。

@0810love

第1話 それは地獄でした

産まれてこの方、幸せだったと呼べる瞬間など一度もなかった。


気づけばそこは檻のような場所で、与えられるのは飢えを凌ぐための食事と、地獄のような訓練。


教え込まれるのは、人を殺す方法だけ。


それ以外は何も許されず、何も与えられなかった。




女だろうと、子どもだろうと、老人だろうと――。


命乞いの声など耳に届かない。


オレはただ無機質に、命じられるままに刃を振るった。


涙も、苦痛も、哀願も、すべては雑音。


オレは道具であり、殺すためだけのロボットのようだと思った。




そう信じ込んでいた。


……いや、信じ込まされていたのだ。




だが、ある時ふと、胸の奥に重い影が広がった。


何人殺しても、どれほど血で手を濡らしても、心の奥には空洞しか残らない。


紅に染め上げられたこの手は、誰のために動いている?


命じられるままに人を屠り続ける自分の姿に、初めて「虚しさ」という感情が芽生えた。




その夜もまた、暗闇を彷徨っていた。


無数の死を背負いながら、出口のない闇の道を、ひとり歩き続ける。


ふと顔を上げると、そこにあったのは青く澄み渡る空。


そして、空を自由に舞う、一羽の鳥だった。




その姿に、オレは言葉を失った。


自由とは、ああいうものなのか。


檻の外を知りもせず、命じられるままに血を流す自分とは、何という違いだろう。




見えない首輪を取り外すと決めた




この首輪を、自分で取り外す。




そうして初めて、オレは“自分の意思”で生きることを選んだ

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