【第一期完結】羽鐘司令とスマホ少尉 ~読書した作品を紹介してみよう~

羽鐘

羽鐘司令とスマホ少尉の自己紹介

 髭を生やした男が、仏頂面でパソコンのモニターを見つめている。

 男の名は羽鐘。

 数多あるウェブ小説のなかから気になる作品を読み、面白い作品であれば他の人にも読んでほしいと願い、支援砲という名の応援ハートやコメントを残す「作品支援部隊」の作戦司令である。


 「作品が読まれていない……」

 羽鐘がシガレットチョコを咥えながら、重々しく呟いた。

 羽鐘の中では間違いなく「面白い作品」だ。文章には力があり作品に込めた熱量が伝わってくる。だが、思うように閲覧数が伸びていないように思える。


 羽鐘は溜息をひとつ吐き出すと、スマホの画面をタップした。

 画面が輝き、男の部下であるスマホ少尉が目覚める。


『司令、お呼びでしょうか』

「どうしたことだ? 読まれていない。スマホの予想では一日に100PVは確実とのこと。しかし現実は2ケタもままならないではないか」

『司令の書いたやつですよね? お世辞ですよ、そんなの』

 AIを使った音声機能の癖に、妙に流暢な日本語を話すスマホ。

 上官であるはずなのに軽口を叩くことに羽鐘は苛立ちを覚える。


 ハードボイルドを気取るためには煙草はかかせない。だが吸えない。

 そのために苦肉の策としてシガレットチョコを咥えている羽鐘は、思わず嚙み砕きたくなる衝動を懸命に堪える。

 もちろん机上に置かれているブランデーのような飲み物はウーロン茶だ。

 羽鐘には、ハードボイルドは絶望的に向いていないのだ。


『だって我々作品支援部隊は、自分の作品を応援できないんですから、PV増やそうとしたって無理ですよ』

「わかっている。しかし、辛いのだ……」

『じゃあ、面白い話書けばいいじゃないですか』

「マジレスは心にくるからやめーや」

 

 作戦支援部隊は、あくまで未来ある作家を支援してこそ輝くのだ。

 自ら輝く必要はない。


 羽鐘は、もう一度、深く溜息を吐き出すと、スマホを操作した。

 そこに、一つの作品が表示されていた。

 次の支援砲の対象だ。


『司令、この作品ですね……』

 スマホが低く、呟いた。

 気を付けなければ、この作品はロックされてしまう可能性があったからだ。


「そうだ。支援準備急げ。支援砲装填、核を捉えろよ!」

 羽鐘は自らを奮い立たせ、作品支援部隊に指示を出し始めた。


 次回予告

 第一回支援作戦

 作戦名 :善人は必ずしも救われないなら、せめて支援しよう

 対象作品:ミナゴロシノアイカ ~生きるとは殺すこと~

      【神世界転生譚:ミッドガルズ戦記】

 

 



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