第2話 その結果は・・・
「今からお主の才能を見るが、苦しくなったらすぐに言うのじゃよ。万一にも魔力過敏反応を起こして死なれたら困るからの。」
え、何それ聞いてないんだけど。死ぬの?確率は分かんないけど、それが余計に不安を掻き立ててくるんだけど。
「では、始めるからの」
そう言って俺の手を握ると、老人から何やら温かいものが体に流れ込んでくる感覚がした。
「ほうほう、なるほど。うむ、これで終わりじゃよ。」
3分ほど経って温かいものは引っ込んでいった。
何をしたのかよくわからなかったが、もう終わったらしい。
「ありがとうございました」
「ほっほ。では、さっきの部屋にもどろうか。君のお父さんと君の才能について話し合うからの。」
今の間に俺の才能とやらを調べたのだろうか。
元の部屋に戻ると、父上が神妙な面持ちで待っていた。
「さて、どこから話そうかの」
老人が話を始めると、父上は心配そうに老人に聞いた。
「愚息は失礼なさりませんでしたか?」
またそれか。何も失礼なことはしてないよ。思わず口に出そうになったが、空気を読んで言葉を飲み込んだ。
「大人しい子じゃったよ。幼いのに無駄な質問もしてこないから、下手な貴族よりも賢いかもしれぬな」
しばらく老人の吐く他の貴族たちの愚痴を聞いて、ようやく本題に入った。
「リオン御子息の才能じゃが、平均程度じゃ。魔力量は中の上程度、属性は火に土。成長速度は速い方じゃ。異能は特に無いが、まあある方が珍しいからの。特筆することは無し。何か質問はあるかい?」
「いえ。ありがとうございます。息子の才能はそれなりのようで、これからの教育方針もある程度固まりました。では、失礼します。」
もうここでやることは無いようで、父上の後に続いて建物の中から出た。
「父上、あの老人は何者なんですか?父上があんなに敬う人なんて、初めて見ました。」
「あのお方はだな・・・・・・いや、今のお前に言うのは辞めておこう。いずれ必ずそれを知る時が来るから、その時までは我慢しろ。」
何も分からないことが分かった。しかし、いつか分かるらしいので、それが唯一の収穫だ。
その後、また馬車にしばらく乗り、屋敷に帰った。
「おかえりなさいませリオン様。お疲れとは思いますが、もうすぐ家庭教師の時間となります。準備をしてください。」
家に着くなり家庭教師のドールが声を掛けてきた。
彼は、なんと最年少にして宮廷魔術師となった天才だ。
宮廷魔術師とは、父上曰くこの国の魔術師の一握りの天才がなれるもので、それになるには厳しい試験に合格して2人の宮廷魔術師からの推薦を貰ったものだけがその称号を国王から授与されるらしい。
そんな彼がどうしてうちで家庭教師をしているのかと言うと、これまた父上曰く、この国の貴族は全員宮廷魔術師を家庭教師として跡継ぎを教育する義務があるらしい。
これは、なんと才能と社交力さえあれば身分の貴賤は関係なくなれるらしく、ドールはその制度を利用して平民出身ながらも宮廷魔術師になれたとのこと。
そんな理由で、ドールがうちに回ってきて俺の家庭教師をしてくれているのだ。
「ああ、もうそんな時間だったんだ。分かった。ドール、今から準備するから少し待ってて」
急いで自分の部屋へ行き、授業の準備をしてドールの元へ戻った。
「準備はできましたね?リオン様。今日は5歳の誕生日をお迎えして才能を見てもらったとの事なので、今日からはいつもの授業をした後に魔法の稽古が入ります。」
ドールが言うには魔法の稽古が今日から始まるらしい。
魔法の稽古が楽しみで浮かれていると、あっという間に教養の授業が終わって、遂にお楽しみの時間になった。
「では、今から魔法の理論について解説します。これを理解しないと、どんなに魔法に適正があったとしても魔法は使えませんのでしっかり聞いてくださいね」
まじかよ。よく見るなろう小説ではイメージさえ出来れば魔法は使える物ばかりだったが、この世界ではそうもいかないらしい。
俺は魔法に対する認識を改めて、ドールの話に耳を傾けた。
「魔法は、我々の体に貯められている魔力で魔法陣を描いて使用します。その際に魔力を使う魔法の属性に合わせて変換するのですが、そこで各属性への適性が影響してきます。」
適性か。確か俺はこれが火属性と土属性だったな。
「適性がある属性は、個人差がありますが最低でも4級魔法までは使用可能です。他の適性のない属性の場合、1級魔法程度までしか使えません。属性には七つの種類があり、火、水、土、雷、風、黒、白があります。それぞれの属性では出来ることが異なり、火なら炎を出したり相手を燃やしたり。土なら地面を崩したり壁を作ったりすることが出来ます。これも個人差がありますが、大抵属性の適性は二つほど持っていることが多いです。リオン様は火と土とのことなので、まあ平均程度ですね。」
適性は複数持っているのが普通なんだな。才能がある人は全部の属性に適性があったりするのだろうか。
「魔法を使用する際の魔法陣ですが、魔法を使うためにはそれを覚えないといけません。勿論使用する魔法の種類によって模様が違うので、魔法を使うための最大の壁は魔法陣だとも言われています。しかし、今日は、初歩の魔力操作を練習してもらいます。魔力操作は魔法に限らずあらゆる魔力を使う事象に重要です。ですので1、2ヶ月は魔力操作の練習となる予定です。何か質問は御座いますか?」
情報量が多いな。一筋縄ではいかないのは容易に予想できた事だが、これはなかなかに難易度が高そうだ。
そういえば、ドールの喋り方を見るに、魔法を習得するのが前提となっているように感じるな。どうなってるんだろ。
「魔法は絶対に習わないといけないの?あ、いや。魔法が嫌ってわけじゃなくて・・・・・・」
俺が質問すると、ドールはにっこり微笑んで優しく教えてくれた。
「良い質問ですね。実は、この国では貴族に、王都にある学園に通って魔法の技能や学業を修め、王家に貢献するという義務があるのです。学園に入学する際には試験があり、その中に魔法の実力を試す物があります。そのため、貴族である貴方は魔法を身に付けないといけないのです。分かりましたか?」
「うん。ありがと。他に、さっき言ってた一級魔法とか4級魔法って何?何が違うの?」
「私の話をちゃんと聞いてくれたのですね。魔法には等級というものがあり、発動に必要な魔力の量や魔力操作の技能、魔法陣の難しさなどから区別されていて、現在は一級魔法から十二級魔法までがあります。一級魔法は誰にでも使えるような魔法ばかりで、魔力量が貴族と比べて少なく、魔力操作があまりできない平民でも使えます。第二級から第四級までは、平民の中で才能のある者が努力して栄えるようになる程度です。それに対して、貴族の場合は平民と比べ、魔力量が圧倒的に多く、適性のある属性なら最低でも第四級、鍛えれば第七級までは使えます。宮廷魔術師は最低でも第六級魔法が使えます。私は七級までですね。」
彼は平民は第四級までしか使えないと言った。しかし、最後に自分は七級まで使えると言った。
何事も例外はあると言うが、平民で最年少の宮廷魔術師とは、そこまで規格外だという事を俺は改めて思い知らされた。
「分かりやすかったよ。ありがとう」
「いえいえ、それが私の仕事ですから」
ドールとの問答を終え、遂に今から魔力操作の練習をする時間となった。
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