第2話

放課後の教室。

みのりは必死に机に顔を伏せていた。


(ど、どうしよう……佐伯くんに“匂いフェチ”バレた……!

明日から私は“変態女”のあだ名で過ごすことになるんだ……!)


半泣きで固まるみのりの耳元に、ひょいと声が落ちてきた。

「なに暗い顔してんの。そんなことで悩むなよ」


顔を上げると、佐伯がにやにや笑って立っていた。

「な、なんであんたは平然としてるのよ!」

「だって面白いし。ほら、嗅ぎたいなら嗅げよ」


そう言って、自分のジャージを目の前に差し出す佐伯。

みのりは耳まで真っ赤になった。


「~~~~っ! やめなさいバカ!」

「はは、冗談冗談。でも、マジでそういう素直なとこ、俺好きだぞ」


さらっと言われて、心臓が跳ねる。

好き――って、今好きって言った!?


「ちょ、ちょっと待って! 今のはどういう意味!? からかってるんでしょ!」

「からかってないって。俺、他人と違うとこに惹かれるタイプなんだ」


そう言って、佐伯は教室を出て行った。

残されたみのりは机に突っ伏し、心の中で大絶叫する。


(な、なんなのこの人!! めちゃくちゃペース崩されるんだけど!?)


でも――

ほんのりと残るジャージの匂いに、みのりは顔を埋めてしまうのだった。

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