第3話 帰宅部集団

 どうも、いっ君さんだゾ。

 今日は部活の仮入部期間らしく、行って見る事にしたゾ⭐︎

幾つか興味のある部活があるから順番に行って見るかな。


 ――ヨシ、それじゃ早速let's go!


※ ※ ※ ※ ※


〜遊戯部〜


 仮入部期間、初日は遊戯部に来ております。

如何どうやら様々な遊びがあるようで、取り敢えずルールが分かるUNOをする事にした。

 UNOのルールは簡単。順番にカードを出すのだが、カードにある数字か同じ色を早く出した者が勝利となる。

 勝負中に相手の順番をスキップさせるカードや、逆転させるカードもあるので勝負するのが楽しくなる。


 さて、対戦相手は――


「あれ?遠坂君じゃないか?」


 目の前の席に座っていたのは葉山颯吾君であった。

おや?如何やら知ってる相手と偶然同じ日に当たったようだ。


「おっ確か…葉山君じゃないか!君も此処に来たのかい?」

「そう言う君も…まあ、此処に興味を持つのは当たり前か!何せ色んなゲームで遊べるのだし、他の人達と交流も出来るからね!」


 彰人の言う通り、明るくコミュ力が高い人物であった。

これは彰人から聞いた話だが、イギリス人の母親と日本人の父親の間に誕生したらしく、その証拠に金髪碧眼に整った容姿に女性陣が頬を赤くしているのが分かる。

 そして何よりあの笑顔だ。あんな年相応の明るく可愛らしい笑顔をされたら女性陣は堕ちるに決まってるって。


 そうこうしている間にも、カードが配られて勝負が始まる。

 先ず、対戦相手の先輩方から順番にカードが切り出され、葉山君が黄色の1番を出した事で、俺は黄色の8番を取り出した。

 次に一周し、葉山君が青の4番を出し、俺はスキップカードを使用して意図的に相手の行動を封じ込め、次の周に行かせる。

 軈て何周かした時に葉山君が逆転カードを出した事で周回が逆転し、更にUNOと行った事で残り1枚となっている事が分かる。


 対する俺は残り2枚である。

カードはカラー変えと通常のカードのみで、どの道勝てる要素が見つからないので、一位は諦めて二位を目指す事とする。

 カラー変えでUNOと共に青に選択すると葉山君は青を出せずにカードを追加し、何故か俺は最後の一枚を出して勝利が出来た。


 ――え?俺なんかやっちゃいました?


 と、内心思いながら勝負が終わるまで見続けるのだった。




※ ※ ※ ※ ※




〜和太鼓部〜


 仮入部2日目は第二音楽室で和太鼓部に来ているゾ。

如何やら神楽坂雅紀君と彰人と一緒に仮入部に来たようだ。


 そんで先輩方と一緒に準備室から和太鼓を取りに行った。

 先生が準備室の鍵を開け、和太鼓の下にある車輪の付いた台を押しながら第二音楽室に戻って取り付け完了。


「えーでは和太鼓部の練習を始めます。先ず太鼓の種類から――」


 和太鼓には幾つか大きさがあり、太鼓を叩くバチにも大きさによって音が異なって来るらしいが、取り敢えずやれば早いだろう。

 試しに大きい方のバチで太鼓の表面を鳴らして見ると軽くドンと言う音が鳴り、心に響く気持ちの良さを感じられた。

 

「次に小バチは軽い音を出すのに最適で――」


 先輩が小バチで太鼓を叩くと小さいながらも良い音が鳴った。


 そうして先輩方は大きなバチと小バチを駆使した演奏をしてくれて、とても迫力のある和太鼓にバチで叩いてカッカッドン!と言う音が印象に残った。


 ――これは実際に演奏すると気持ち良いだろうな。


 そう思わせる程に先輩方は汗を流しながらも、楽しそうに演奏する姿に目を奪われてしまった。

 左右に座る神楽坂雅紀君と彰人は目を輝かせながら先輩方の演奏を聴いていた。


 ――嗚呼、こりゃコイツらが入るのは確定したようなもんだな。


 と、二人に対して一種の尊敬を込めた視線を送るのだった。




※ ※ ※ ※ ※




〜陸上部〜


 仮入部3日目は陸上部に来たのだが…


「よーし、今日は近くの裏山を外周して見ようか」


 と、言う事で聖嶺學園の裏山を外周する事となり、先輩方の後ろを入っている訳だが…


 ――ぜぇ…ぜぇ…速過ぎじゃ…ねぇですか…


 最初のうちは先輩方より少しスピードを落として走れたのだが、徐々に坂がキツくなるのと同時に先輩方のスピードが早まった事で遂に追い付けなくなり、かなり自分のスピードを落としながらも何とか走っているつもりであった。


 周囲は自然豊かな森林に囲まれ、鳥の囀る鳴き声や少し外れると車が走行する音が聞こえる程度で他は自分の息しか聞こえない。

 先輩方や他の新入生達は既に遠く。


 ――うわ…俺一人かよ。ある意味…孤独みたいなもんじゃんか。


 俺はある意味一人と言う孤独に襲われるが、逆に考えれば周囲の目線に遠慮せず自分のペースで走れると言う事もあり、一番後方を走る太った先輩には負けないように走る。


 ――絶対に…あの…先輩だけ…には負けて…たまるか…


 そんな考えで何とかギリギリ走り切り、そのまま地面にダイブした。


 頭は回らず、視界は辛うじて見え、息は切れ切れ。

全身は震え、足は子鹿のように言う事を聞かない程に震え切って運動系の部活動は合わないなと感じた瞬間でした。




※ ※ ※ ※ ※




〜帰宅部〜


 それから幾つかの部活動に参加させて頂いたが、どれも何処かが違うなと感じて辞めておいた。

 その原因は自分にも分からないが、ウダウダ悩んでいても仕方が無いので朔夜と廣仁の二人と共に帰路を辿っていた。


「そう言えば部活動は如何だった?」


 俺は教室にいた廣仁と朔夜の二人は如何したのか気になったので、質問して見た。


「……この学校に文学部は存在していたみたいだが、人数の関係で今は廃部になったみたいでな。他に良い所が無かったわ」

「ボクも水泳部に行って見たんだけど…何か視線が怖くて辞めちゃった」

「「あー…」」


 何となく理由が分かってしまった。

 恐らく水泳部の野郎達が天然な男の娘である廣仁の水着姿に興奮してしまい、部活どころの話じゃ無かったのだろう。

 結局、俺達は部活動を決める事は無く、帰宅部になってしまったがそれも一種の選択肢だろう。

 ……と、俺が思っていると朔夜はスマホで電子小説を見ていた。


「……俺も文芸部で皆と青春を謳歌して見たかったな」


 その一言で、俺の中で何かが閃き、弾け飛んだ。

文芸部…小説…青春を謳歌…


「――なら俺達で俺達なりに青春を謳歌してみないか?」

「「え?」」


 俺は二人に説明して見た。


「先ず、何処にも馴染めない俺達は有り余る放課後の時間がある。ならその時間を俺達で自由に遊んだりし、それを記録って言う形で小説擬きにして見るのは如何どうだ?」

「……俺達の日常風景を……小説に……?」

「確かに面白そうだけど…小説サイトに載せる勇気が無いよ?」


 確かに小説サイトに載せるとなれば勇気が必要となるだろう。

しかし、俺達なりにするのなら別の方法もある。


「小説サイトが無理ならL◯NEのトークに載せるのは如何だ?それなら俺達しか見ないし、思い出を共有出来ると思うし」

「……それなら面白そうだし、やれるかも知れないな」

「うん、ボクもそれなら賛成かな」


 と、言う訳で早速俺達は駅前のマックスドナルドに行き、其々の食べたい物を購入し、それを日常風景と言う形で文字を起こして見る。


「二人は何にしたんだ?」


 俺がそう言うと朔夜は涎を少し垂らしながら、目をキラキラと…


「……俺はその時の気分だが、今日はチキンチーズバーガー」

「ボクはポテトが食べたい気分だったからポテトのLにした」


 朔夜はチキンチーズバーガーを美味しそうに食べては満面の笑顔となり、廣仁はポテトを幸せそうに食べてはコーラで飲んでいた。

 ――いやはや、本当に幸せそうでニヤニヤしてしまうわ。


 俺は特に廣仁の方をじーと見つめていたが、ふと廣仁と目が合うと恥ずかしそうにポテトを譲らないと言わんばかりにポテトを胸に寄せてから食べ始めた。


  ――“あ”あ”あ”あ”あ”可愛いよぉぉぉぉ!!


 限界ファンみたいな速度で内心叫びながら、L◯NEに文字を打ち付けてつい変態染みた描写が出来上がってしまった。

……廣仁からポテトを一個だけもぉらい!


 すると廣仁が「あっ!もうぉ!?」と、可愛らしく抗議の目線を送り付けて来るが…それすらも可愛くてスマホの写真に収めた。

 

「うわぁ…好きな子に悪戯する奴じゃん」

「可愛いのだから仕方が無い!」

「……それは同意する」

「えっ!?朔夜君までそっち変態に行かないでよ!?」


 廣仁に可愛い睨みをされ、俺達はそれを見て…つい笑った。

 そのままだと廣仁に拗ねられてしまいそうなので幾つか触れていない俺の分のポテトを差し上げて何とか気分を直せて頂きました。

 ……何か廣仁ってポテトに対する執着が凄いんだな。


 と、俺はそう思いつつL◯NEに投稿するのだった。

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