2
お兄様方にエスコートされつつ母屋の控え室に辿り着いた。
裳着の儀式事態は裳を着せてくれる
お兄様の時は、
「皐月、一つ報告が。」
「なんですか?お兄様。」
「今日の招待客の中に、皐月の婚約者候補の方々もいらっしゃるらしい。」
「婚約者ですか?お兄様ならともかく、私に?」
「兄上、私も初耳なんですが。」
「私も先ほど父上から聞いた。誰が候補者かまでは、私も聞いてない。」
三兄妹揃って首を傾げる。
確かに私を、少しでも縁を繋ぎたいお家に嫁がせたい方もいるらしいのだけど、両親が恋愛結婚なので本家の我が家は恋愛結婚推奨派。なのに、婚約者候補というのはどう考えてもおかしい。
嫡子であるお兄様ですら、婚約者候補なんていないし現在交際をされている方と仲良くなろうとしている所なのに。
「皐月が嫌だと言ったら、父上も断ってくれるさ。」
「私もそう考えている。そもそも“恋愛結婚推奨”と言っているのに、婚約者はちょっと早いと思うしお相手と恋愛関係になると考えているとか??」
「よくわかりませんね。」
コンコンとノック音がして時間だということで、3人で会場へ向かった。
会場の扉の前で深呼吸をし、お手伝いさんが扉を開けてくれた。
会場の中央には父であり、現安倍家の当主である成親が立っていた。
予想通り、お父様が腰結役を務めてくれるらしい。
お父様の所へ着くと、兄様と小兄様は私から離れてお母様の隣に並び、裳着の儀式が始まった。
儀式自体はすぐに終わる。
問題は直系の娘。成人したことを記す系譜への署名と血判を押す方だ。
それに関してはお父様とお母様は不安そうな表情をしていた。
お父様達は詳しい事情を知っているのだろうけど、祭壇の前に置かれた系譜の前に立つと、ふわっと風が起こった。
朱桜が渡してくれた、ブレスレットも淡く輝き出すと、朱桜、琥珀、雪華、青兄が姿を現した。
4人同時に姿を現すなんて珍しい無と考えながらも、筆をとり系譜に署名をして初代様から受け継がれている小刀で右手親指を少し切るとぷっくりと血が盛り上がってくる。
それを確認するとそのまま名前の下に押し付けた。
一瞬何が起こったのか分からなかった。
閃光が部屋全体を包んだかと思うと、体が宙に浮く感覚に襲われた。
「え?」
〈皐月!!!!〉
朱桜が叫んでいた気もするが返事が出来ないまま、地面が無くなった感覚と視界が反転したと同時に空が見えた。
「痛っ!!」
軽く高い場所から落ちたような感覚と、土の手触りで尻餅をついて、きつく瞑っていた目を開いた。
ゆっくりと目を開け視線を上げると大きな木造の建物。
京都の御所に似ている。
「な、んで??」
呆然と周囲を確認していると複数の足音が聞こえて来た。
足音がした方には、太刀を腰に差した男達がやってきて、その太刀を私に向ける。
「どこから来た?!清涼殿のお上の御前だぞ!!女人がなぜここにいる?!」
太刀を持った武官を引き連れた男が叫ぶ。
“お上”・・・・確かに御簾の奥に人影がある。
その手前には白い直衣を着た男性の姿が見えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます