第3話 魔王って結局なんなの?

「平突、よく聞いて?魔王はね、この山の向こう側に居るんだ!」

「え…この山の?」

 この山って…目の前にある山の事だよな?これさ…めちゃくちゃデカいんだけど。正直、富士山!とか言ってたけど、目じゃないぐらいでかい。これの裏側…。もっとあの村で休んでれば良かったじゃん。

「それ、先に言う事は出来なかったのか?」

「ごめん…僕にも何が何だか分からなくて」

「どういう事?」

「なんか、なんていうのかな?本当に降りて来た感じ。直感ってこういう事なんだと思うんだ」

「急に何かに目覚めた?あの短い間に修行してきた?」

 はっ?!さては、あの喋ってなかった時間…修行出来ていた?!そんな馬鹿な…あり得ない。数十発の正拳の時間の中で…時間超越能力に目覚めたって事か?!そうか…道理で速い訳だ!

「平突?立場が逆転してるよ、えい!」

「何すんだ?!ってあれ?俺…もしかして?」

「そう、毒されてる!気づかなかった?気づかない間に平突はボケにボケを重ねていたんだ!」

「そんな…馬鹿な?!」

 あり得ない話じゃない。でも…ちょっと楽しかったんだよなぁ…ボケにボケを重ねるこの瞬間。はっ?!思考がまた毒されて…。これは思っているよりも重大な問題なのかもしれない。

「平突、まずは…」

「まずは?」

「ムラムラを駆け回るよ!」

「お前の情事は知ったこっちゃねぇ!!」

「あれ?僕…何してたんだっけ?」

「えぇ…記憶ないの?俺が叩きすぎた?」

「僕、そんなに叩かれたの?」

 木瓜…お前が撫でてる所は殴ってない。殴ったのは…頭だ。それと、この"正拳"思ったよりも痛くない、というか痛みは感じない。じゃあ、俺の所為じゃないか。気にしなくていいや。いつも通りに戻っただけだ。

「所でここを超える訳だけど、何かある?」

「え?村を巡るんじゃないの?」

「覚えてるんじゃないか!」

「う…頭が…」

「都合悪い時だけ記憶喪失の振りすんな!」

 ポカリ。また一つ…浄化してしまった。ボケ成分ってもしかして…"木瓜"の成分?あはは、そんな訳…無いよな?まさか、あり得ない。だって俺らがこの世界に来た時には既に…。

「ないない。あり得る訳がない」

「ん?どうしたの?」

「いや、木瓜の成分が空気中に舞ってる可能性があるか?と思ってな。」

「そんな訳ないじゃないか~!流石に僕が主役なんてことは無いよ?」

「言いすぎだろ!お前も一応主役だからな?」

「え、そうかな?過言過ぎない?」

「お前、過ぎ去ってるな」

「過ぎて過ぎてだから?」

「説明するな!行くぞ~。次の村…って言うか、さっきの村って村人一人なの?」

 あんなに建物があって、村人一人?どういう世界観なの?それにすらツッコまなきゃいけないって事?視野広すぎ。

「あ、村の入り口見えたんじゃない?」

「ん?確かに…というかなんかいない?」

「あれは…パンダかな?」

 確かに、白黒の見た目、熊の様なごつい体…ああ、本当にパンダじゃないか。ていうか、パンダが居る村ってなんだ?!こっちじゃレアじゃないのかな?

「どうも~パンダです~」

「やっぱり喋るんか?!」

「白黒ハッキリしたものが大好きです~」

「ハッキリしてる…か。」

「私って、熊と猫、どちらでしょうね?」

「猫目の熊科…ハッキリしてないね」

「うぐぐ…そうなんです…私自信があいまいな存在なのです…。」

「そんな事は無い!その可愛さは本物だよ!」

「人間さん…。」

 パンダと木瓜が抱き合ってる…。何?この状況。どういう事なの?村の前に居るパンダ…ソンソンとかかな?村村でソンソン。

「私の名前はソンソンです」

「やっぱり村村じゃねえか!!!」

「なんでパンダって名前二つ重ねるんだろうね?不思議だね?平突?」

「それは…知らん!!」

「実は、最初に来たパンダの名前が重なっていたから、だそうですよ?」

「へぇ…ってそうなの?!」

 知らなかった…。動物園に居たパンダってそういう理由で名前つけられてたのか。別にいいのか、なんでも。

「所で、なんでこんな所に居るの?」

「魔王様からの命令でして」

「え?」

「貴方を倒させてもらいますよ!!」

「急に襲い掛かってこないで?!怖いから!!」

「怖い…私、怖いですか…?」

 ウルウルした瞳をこっちに向けないで…それもそれで怖い!一応熊ってついてるから…なんか食べられそうで怖いし。檻越しに見るのと違って迫力があるのよ。

「ていうか、魔王様?」

「ええ、私四天王をしておりますので~!」

「居るのかよ?!というか、四天王の中では最弱!とかやるの?」

「やりませんよ?なんですかそれ?」

「くくく…僕は四天王の中でも最弱!!」

「木瓜、お前はやるな!!」

「ぐわぁぁぁ…この私が負けるなんて…!!」

「どこに負けたんだよ?!」

「ぐわぁぁぁ…止めまで刺された…魔王様は…あっちに。」

「いや、最後内通者なの辞めれる?後味がすげぇ悪いから。」

 木瓜の悲しそうな眼を見て…俺はもっと罪悪感が出た。だから木瓜の頭を"正拳"で殴った。木瓜のボケ成分とパンダは消えて行った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る