スパンキング短編集

紅臀堂律

この世界の神話(M/F)

はじめ、世界は「創世女神レアーネ」の手の中にあった。

彼女は大地を編み、海を注ぎ、空を磨き上げ、そのすべてに命の息吹を吹き込んだ。

人々は豊かな大地に笑い、恵みある海に歌い、星降る空に祈りを捧げていた。


しかし、やがて人々は己の欲と驕りに飲み込まれた。

領土を奪い、血を流し、憎しみを言葉に変えて投げ合い、争いは終わりを知らなかった。

レアーネの心は悲しみで満ち、やがてそれは深い絶望へと変わった。


彼女は静かに世界を見下ろし、その全てを白い指先で壊そうと決意した。

空は震え、大地は裂け、海は逆巻き、終わりの兆しが広がる。

他の神々は慌てて集まり、彼女を止めようとしたが、その心は閉ざされていた。


そのとき、「叡智の男神カイロス」が一歩前に進み出た。

彼は力でも言葉でもなく、ただ一つの行いで彼女の頑なな心に触れた。

レアーネの背後に回り、その清らかな身を抱き寄せると、静かに、しかし確かに、その白き尻を打った。


衝撃は雷にも似て女神の全身を走り抜け、胸奥の激しい怒りと悲嘆を揺さぶった。

痛みと羞恥に頬を紅潮させた彼女の目に、初めて涙が溢れた。

その涙は憎しみを溶かし、崩れかけた世界の色を再び取り戻した。


神々は胸をなで下ろし、人々も己の愚かさを悔いた。

こうして「創世女神レアーネ」が男神カイロスの叡智の罰を受けた出来事は、永く伝承されることとなった。


それ以来、この世界では女性が過ちを犯したとき、愛と叡智をもってその身を正す象徴として、お尻を叩く罰が定められた。

それは女神の教えをなぞる儀礼であり、同時に逃れられぬ恥と痛みを伴う戒めでもあった。


これがこの世界の神話であり、女性がスパンキングされる最大の理由だ。

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