第10話 「SR慰安旅行」

咎禍 第10話 「SR慰安旅行」


譲介達はキャリーとの決戦を終えた。「ドラゴナイト」「アトラ」「スーパーレックス」「UFOアコンシャス」「サイX」…。


長きに渡り大量のアコンシャスを中国にばらまいたやつらの首を遂にとった。


譲介達はボロボロの状態で、SRアジトへ帰るのであった。


朝日が昇り、鳥のさえずりが聞こえる静かな病室。


そこに譲介、慧悟、剣、問馬はベッドに横たわっていた。


「ガチで痛い!痛い!」


「ここまでの痛み…小学生の時以来だぜ…」


問馬と剣の悲鳴が病室に響く。


「いや小学生の時何があったんだよ…」


やはり慧悟のツッコミが飛ぶ。


田蔵は腕を組みながら、譲介達を見下ろす。


「みんなかなりの傷じゃのう。」


剣は顔を青ざめながら


「なんであんたは立ってられるんだ…」


と言う。


田蔵はそれを豪快に笑い飛ばす。


「ホホホッ!この程度の傷へっちゃらじゃぞい!」


田蔵はあの傷でピンピンしてる。流石としかいいようがない。


「剣さんは胸骨と鼻骨が骨折してますね。」


百合香が剣に近づき、状態を見る。


「なんやて!ワイのイケメンな鼻を潰されるなんて屈辱的や!」


剣は鼻をおさえながら、驚きの表情を見せる。


「ハハ…」


と百合香の乾いた笑いが飛ぶと


「やかましいな」


と慧悟のツッコミがまたもや入った。


「とにかくしばらくは安静にな。みんなよく頑張ったな。」


田蔵が優しい顔で褒めると、問馬が両手を上げながら喜ぶ。


「褒められたぜ!俺がテスト3点を取った時くらいうれしいぜ!」


「3点で喜ぶとか普段は何点だったんだ?」


「-1億点だぜ!」


「マイナス!?」


「それ先生もやばくないですか…」


「テスト用紙に落書きしすぎたぜ。これだぜ。」


そこには名画と言えるほど美しい絵と先生の「落書きしたから-1億点です」というコメントがあった。


「普通にすごいな」


「これ落書きって呼んでいいんですか?」


「落書きっていうには勿体ないのう」


「?。よくわからないけどそんな上手なのか!」


このような感じで5日は安静に過ごしていた。


いつも通り田蔵が料理を作っていた。


「できたぞい。海鮮丼じゃ。」


「いただきます。」


「うまいぜ!」


問馬はそれを手づかみで食べる。


「箸使え!」


「わかったぁ〜ぜぇ〜!」


慧悟に言われてやっと問馬は箸で食べ始めた。


そんなほのぼのした食卓の中、田蔵がこういった。


「みんなキャリーをボロボロになってまで倒してくれた。その礼として何かをしたくてのう。傷を癒やす温泉があるらしいのう。どうじゃ?慰安旅行にでも行ってみないか?」


その誘いに全員が頷く。


「なるほど慰安旅行ですか。」


「慰安旅行って言葉わかんねぇけど!なんか楽しそうだぜ!」


「問馬!慰安旅行は楽しいやつやで!行くっきゃないやろ!」


「なら決まりじゃな!」


こうして田蔵の一声によりSRは慰安旅行に行くことになったのだ。


車を走らせ、広い銭湯へと到着する。


「ついたぞい。」


田蔵が指をさすと


「楽しそうだぜ!行くぜ!」


と問馬は駆け出し、どこかへいってしまう。


「おい!勝手にどっかいくな!」


「問馬えぐいて」


剣と慧悟はすぐにそれを追いかけた。


なんとか問馬を捕まえ、受付までやってきた。


「『田蔵信臓』で予約じゃぞい。」


「田蔵さんですね。リストバンドと館内着です。どうぞごゆっくり。」


(てか語尾に「じゃぞい」つける爺さんって現実にもいたのか。)


こうして譲介達は温泉へ向かった。


扉を開き待っていたのは広い温泉


体をおけで洗い流し、ゆっくりと足から水面に入る。


「いい湯じゃな。」


「そうですね。」


鮮やかで壮大な山と海の景色も見える。最高の温泉だ。


ふと譲介は田蔵に目をやる。


それを見た譲介はあまりの完成された肉体に目を見開く。


田蔵の体には85歳とは思えないほど凄まじい筋肉がついていた。更に歴戦を感じさせる大量の傷が刻まれていたのだ。


(凄い体だ…これが歴戦の猛者か…)


譲介の関心をものともせず問馬が温泉へ飛び込む。


「いっくぜぇ〜!」


「飛び込むな!」


「温泉で泳ぐの楽しいぜぇ〜!」


慧悟の注意を無視し、問馬は温泉を泳ぐ。


「問馬!今週のジャンプの敵やべー!キャリーよりつえぇぞ!」


「ジャンプ?わかったぜ!」


剣の言葉に問馬は解釈違いでジャンプスる。


「いつになったら泳がずに温泉に行けるんだ!あと温泉でジャンプするな!」


「元気がいいのう。若いってのはいいのう。」


「そ、そうですね…」


(元気の領域超えてるよ…)


だが泳いでいる問馬に突如冷水が浴びせられる。

問馬「うわっ!冷たいぜ!」


それを当ててきたのは剣!


「問馬!水の掛け合いや!」


「コノヤロー!!」


問馬さんも湯船から上がりシャワーを手に取る!


「うわっ!冷たてぇ!」


「負けねぇぜ!」


「おぉ若いのう」


彼らのシャワー対決が白熱、慧悟は完全に呆れて何も言えなかった。


「そうだ。譲介。サウナでもいかんか?」


田蔵がそう提案をする。


「田蔵さんは大のサウナ好きでな。風呂に行くときは毎回行くんだ。譲介どうだ?」


「いきます!」


譲介が返事をすると剣と問馬もついてくる。


「えっ、ちょっと置いてかんとて!」


「シャワーでどうやって止めるんだ?」


こうしてサウナへ行くことになった。


温度は90℃。ヒノキの香ばしい香りと空の熱気が全体に伝わっている。


そんなサウナのテレビにはあるものが写っていた。


「あれはまさか」


テレビにはインタビューを受ける李選手の姿があったのだ。


「5日前の試合でさよならホームランを打って見事勝利に導いた李選手です!お気持ちは!」


マイクを受け取った李選手は答え始める。


「はい。まずホームランを打つ前、病気の少年と俺がホームランを打ったら、手術を受けるって約束をしてたんです。」


「ドラマみたいですね。」


「本当にそうです。だから今回ホームランが打ててよかった。無事手術が成功して、今少年は元気にやってます。」


「それはよかったですね。少年が元気になれたのは李選手の努力のおかげです!」


「はい。ですが私だけではありません。監督や仲間が支えてくれた。それだけじゃないんです。知っての通り、あの試合の日、アコンシャスが急に襲ってきて、試合が中止になりそうになったんです。でもSRの方々が守ってくれて、アコンシャスを倒して、誰一人死なせなかったどころか、怪我さえさせなかったんです。そしてぼろぼろになった球場の代わりのコロシアムまで用意してくれた。本当に感謝しかありません。SRの方々がいなければ少年の手術に間に合わなかった。」


「おぉ!SRの方々ですか!それは素晴らしい話ですね!」


その時、譲介がふと呟く。


「俺…ヒーローになれたのかな?」


慧悟は笑顔で答える。


「みんなを救ったんだ。十分ヒーローだよ。」


田蔵、問馬、剣も頷いていた。


「はい…!」


俺は笑顔でそういった。


こうして俺達は体を洗って、風呂を上がった。


「いや〜いい湯じゃったのう。牛乳でも買うか」


飲み物の自販機を前に田蔵は財布を取り出す。


「俺はメロンソーダがいいぜ!」


「ワイはオレンジジュースや!」


「わかったぞい。慧悟と譲介は牛乳でいいな?」


「はい」


「大丈夫です。」


「うむ。じゃあワシのおごりじゃ。どうぞ。」


「うめぇ!」


「ありがとうございます!」


風呂上がりの牛乳は相変わらず生き返るような美味しさだった。


女湯から百合香もでてきて、全員と合流した譲介達は銭湯を去った。


「近くにビーチがある。折角じゃから向かうか。」


譲介達はビーチに向かってから帰ることにした。


朝日は沈みかけていて、オレンジの鮮やかな夕焼けがあった。


「綺麗だな」


「ええ」


「………」


ビーチでの夕焼けを見た俺の脳裏にはある記憶がよぎる。


それは7歳の頃にいった旅行の記憶。


「譲介。夕焼けがきれいね」


「わぁ〜!綺麗だねぇ〜!!」


俺と母さんは海辺で夕焼けを眺めていた。


「母さん…必ず見つけるからな。」


俺は母さんのことを思い出し、母さんを見つけると決意した。


「じゃあ。時間も遅いし、帰るか。ホントに今日は何もなくてよかったのう!」


「はい。襲撃などを懸念していましたが、何もなくてよかったです。」


確かに俺は親を失った。


「見ろ剣!砂の城だぜ!」


「普通にすごくね?」


「マジで芸術家むいてるだろ。」


だが今俺には仲間がいる。俺はこの世界を仲間を必ず守る。


だがこれより5日前、SR本部が動いていた。


「唐澤福会長。台湾にアコンシャスが侵入しました。」


彼女の名はレイナ。SRNo.3を務める女だ。


「そうか。中々の速さだな。予想を超えている。」


そう語るのはSR福会長「唐澤」


「ならば鏡を向かわせろ。」


「わかりました。」


唐澤は『鏡』という人物を指名していたのだ。


そして今日台湾にはアコンシャスが潜伏していた。


「人間!コロス!」


「ア、アコンシャスがでたぞ!!」


アコンシャスに襲われる人々…だがそこにある男が現れる。


「うん。今日も美しい。流石僕!」


手鏡を持ち、自分の顔を見ながら、容姿を自画自賛する男。


そう彼こそ唐澤が指名したSR武闘派「鏡京介」


「誰だおま…」


鏡はアコンシャスの脳天をレーザーで貫く。


「美しくない貴様らはこの美しい私が断罪するッ!」


「ひぃぃい!」


(なんてはやさ!)


逃げるアコンシャス達を鏡はひたすら光線で貫く


ビュン!ビュン!


「美顔の僕に殺されること!ありがたく思え!」


「がはぁ!」


すると鏡は無線を取り出し、唐澤に連絡する。


「唐澤会長。美しくフィナーレしました。流石僕!」


「よくやった。しばらく韓国での動向を見守れ。有事の際は呼ぶ、その時は戻ってこい。」


「了解です!美しい監視を心がけます!」


「台湾は大丈夫だ。今後なにかあればまた報告しろ。」


「わかりました。」


SR本部もアコンシャス討伐のために動いているのだった。


…だがこのあと強敵が現れるなんてことを譲介達はまだ知らなかった。


「私は四騎士で2番目に強いつもりでいるわよ」


そしてその強敵は衝撃的なことを暴露しちまうんだ…


次回 Ⅱ騎士登場

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る